B◆巻物◆
□Beauty
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じっと見つめていると、ふと目が合った。
視線に気付いたからなのか、たまたま偶然か。もしくはナルトも俺を見ようとしていたのか。
だったら良いのに、と思いながらニコリと笑う。
すると途端にナルトは視線を逸らす。何気にショック。平気な顔をしながらも、割と凹んでしまう。
そのナルトの横顔から感情は読めない。
照れてるの?
嫌がってるの?
どちらだろう。
どちらかによってかなり違う。
でも、あんまり見つめていても不味いと俺も目を逸らす。いつも通り愛読書へと視線を戻した。
でも、本当はあんまり読んでいない。
内容はもう覚えていると言うこともあるし、何より、ナルトが側にいると…そっちが気になって仕方が無いから。読んだ所で内容なんて頭に入ってこない。
いつナルトが“カカシ先生!”って話しかけてくれるかも知れないのだから。
内心ずっと待っている。
そんな考えはおくびにも出さないけれど。だって、そんなの格好悪いから。
それにナルトだってそんな風に格好悪い“先生”は求めていないだろう。
格好良い所を見せたい。素敵な所だけ見せたい。
人間として当然の心理だ。
本当は情けない男だけれど、ナルトの為なら、いくらでも格好いい男になって見せる。
最高の彼氏になってみせるのに。
「……カカシ先生」
ついにナルトが話しかけてくる。
胸が高鳴って、内心狂喜していたんだけど、勿論そんな様子は見せない。
あくまでいつも通りの気の抜けたようなのんびりとした反応。あんまりテンションが上がっていたら待っていたのがばれてしまう。それじゃ、格好がつかない。
「何?」
「オレに何か用?」
俺を見上げてきた視線は、胡散臭いものを見るかのように冷たいものだったけれど気にしない。気にならない。
「何で?」
「オレの事見てたじゃん」
「うん、見てただけだけど?」
これは駆け引き。
だって、ナルトも俺を見てた。俺は視線を感じてた。
俺が見ると逸らされるけど。
だから、つまりナルトも同じなんでしょう?
俺を見ているんでしょう?
俺を、想ってるんでしょう?
いっそ聞いてしまいたい。
聞いたら、素直に答えてくれる?例え聞いても、答えてくれなきゃ聞く意味が無い。
それで逃げられるのなら意味が無い。
「何で見てんだってばよ?」
「見てちゃ駄目?」
ナルトも俺の言葉を待ってる。
俺から言わせようとしている。だけど、俺もナルトから、ナルトの口から聞きたいんだよ。
ナルトの気持ちを聞かせて欲しい。
聞いたらちゃんと答えてくれる?
俺を見てるでしょう?
俺を想ってるんでしょう?
俺が好きでしょう?
ねぇ、ナルト……────。
end.
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10.09.12
10/09/05発行『BONAMAN@』から。こんな感じのお話が11本入った短編集です。……って宣伝みたいですが。
※これは、編集前の段階なので若干表現等が違う部分もあります。