B◆巻物◆
□てのひら
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「モテモテなのに、彼女出来ないしさ〜」
ナルトはそれを内心喜んでいたのだけれど。
「あのね、俺は彼女が出来ないんじゃなくて、作んないの」
他の人が言えばただの負け惜しみだけど、カカシが言うと本当に何か理由があってそうしてるんだろうと思ってしまうから不思議だ。好きで、好き過ぎて、カカシを美化して見ているだけだろうか。
だとしたら本当に自分は馬鹿だな、と思ってしまう。
単なる冗談?軽口?
「そろそろ良い歳なんだしさ〜」
「うん、だから、そろそろ…そういう願掛けでもしてみようかと思ってね」
「願掛けって……」
「俺、片思いなのよ〜」
あれ?もしかして墓穴掘った?と思っても後の祭り。
そうか、彼女作る気はあったんだなぁ…と思い知らされて、かなり気持ちは凹んだ。でも、そうやって凹んだって気付かれるわけにもいかないのだ。
「好きな人とか、いたん…だ?」
やめとけば良いのに、口は勝手に動いてしまう。
だって、カカシが言ったのはそういう事だ。そんな気配なんて微塵も感じさせなかったくせに。
いや、わざわざ先生が生徒に私生活を見せびらかすわけも無い。
「いるけどね、なかなか俺の気持ちに気付いてくれないのよ。本当に鈍くて困っちゃうの」
「だよねぇ?カカシ先生に好かれてるって気付いてたら、断るわけないってばよ!格好良いし、強いし、優しいし……」
「ありがとう、ナルト。お世辞でも嬉しいね」
お世辞じゃない…と言いかけて、言って良いのかとまた迷う。生徒が尊敬する先生を誉めるのは良いけど。
もし、それ以上の感情が見えたらマズイ。
今は大丈夫?
「お世辞、じゃねぇし…」
ああ、失敗した。
意識しすぎて声とか震えてる。
「うん、ありがと」
「せ、先生のバカッ!お、お礼言われたら照れるってばよ!z」
「はは、可愛いねナルト」
そんな事言われたらますます困るのに、あんまり困った顔も出来ないのに……。
冗談で、それに笑って答えるような調子で。
「そういうのは好きな人に言ってれば良いんだってばよっ!」
「そう?」
自虐的だけど、今の流れならこういうのが正解だと思ったから。
それにカカシ先生の幸せを願う気持ちも無いわけじゃないのだ。先生が幸せに笑ってくれるのなら、きっとどんなにつらくても我慢できる。
我慢してみせる。
「……だから言ってるんだけどねぇ…?」
「へ?」
カカシはニッコリ笑って。
ナルトはもう色々考えすぎて、イマイチ意味が良く分からなくて。
「…まぁ、とりあえず初詣に行こうか」
言って、カカシが手を差し出す。
繋ぐの?と目で訴えれば、もちろん、と同じく目で答えられる。昔ならいざ知らず、もうナルトも小さくはない。
手を引いて貰う様な歳ではない。
それでも手を繋ぐのか。繋いで良いのだろうか。
変じゃ、ないのだろうか。
繋ぎたいけど。
変な目で見られない?
自分は良い。でもカカシ先生が変な目で見られるのは困る。
大丈夫?
迷うナルトの手をカカシが先に掴む。
「昔はすぐ掴んでくれたのにね」
「もう子供じゃねぇし!」
そう言いながらも、掴まれてしまえばその手を離すことなんて、もう出来ない。ぴったり張り付いてカカシの感触を確かめている気がする。
女々しいくらいに。
でも、こっそりと。
「早く……大人になりなさいね?」
カカシはニッコリ笑って。
ナルトはやっぱり意味が良く分からなくて。
でもカカシが側にいてくれるならそれだけで満足だから、意味なんてどうでも良かった。こうして手を繋げている今が現実なら、それだけで良かった。
もう、
ただそれだけで。
end.
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10.01.09
久しぶりすぎて、何だかちょっと色々すみません。精進します。