B◆巻物◆
□好きだから。 K_side
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たぶん、お前が生まれた時からこうなる運命だったのかな。
15歳も年が離れてて、初めて会った時なんてお前は赤ん坊だった。なのに、俺は年甲斐もなく(モラルも捨てて?)、お前に夢中だったよ。
『
好きだから。
K_side』
任務が終わると、いつもナルトが俺の方を見ている。もちろん任務の最中でも視線に気付く事は多々ある。
ナルトにとっての初対面の印象は決して良くはなかっただろうに、今ではすっかり懐いてくれたのは嬉しい事だ。中忍の忍者学校教師と随分と仲が良いと聞いて少し焦りもしたが、今では断然俺に懐いている…はずだ。
ほら、こうして手を差し出せば喜んで駆け寄ってくる。
それは“一緒に帰ろう”の合図。手を繋げば可愛い顔がほころんで、俺を和ませてくれる。
そのまま上忍待機所にも連れて行く。ナルトは興味津々だったし、ずっと一緒にいればナルトに近づく人間にとって俺という存在は良くも悪くも牽制になる。ナルトに敵意を持つ人間にはもちろん、好意を持つ人間にとっても…。
だから、一緒に並んでベンチに座って、片時も側から離さない。
でもあんまり束縛してるように見えてもいけないから、手にはいつものようにイチャパラを持ってたりするけどね。あくまでそれば、ポーズ。
ナルトが俺に肩をくっつけて、そっと寄りかかって来るのが可愛くて仕方ない。本から目を離さない俺に拗ねたような表情を見せるのも、堪らなく可愛い。
すごく、可愛い。
「カカシ先生、今日は任務無いの?」
「うん」
あんまり焦らして拗ねて、へそを曲げられても困るので適度に返事は返す。その微妙なさじ加減が難しいのだが、その辺も少しずつ慣れてきた。
このくらいなら、まだ本気で機嫌を損ねてはない。
むしろ“構って”オーラ全開でナルトは俺にアピールしている最中といったところだろうか。
本当に、可愛い。可愛くて可愛くて仕方ないよ。
──だけど我慢するしかないじゃない。
ナルトはまだ子供だし、恋愛どころか、他人への執着すら知らないような子なんだから。俺のエゴと欲望を押し付けるわけにはいかないデショ。俺は大人なんだから、このまま抱きしめて俺だけの物にしてしまいたい…なんて我儘は言いたくても言えない。
「じゃあ、このあと家に帰るの?」
「うん」
「晩飯は自分で作るの?」
「うん」
「じゃ、買い物して帰る?」
「うん」
「じゃ、オレ…ついて行っても良い?」
「うん」
「………先生、」
「うん」
何度も話しかけるナルトの声が可愛くて、抱きしめそうになるのを堪えるのに苦労した。必死に本を見る振りで誤魔化したけど、それはそれでちょっとナルトも不信感を持ったらしかった。
いや、返事してやりたいのは山々なんだけども!
正直それどころじゃないというか、こっちはこっちで必死に我慢してるわけで。だって抱きしめちゃったらまずいデショ。
大の大人が、可愛い少年をさ。一緒に勝利を分かち合うとか、それなりの何かきっかけがあれば、それも良いだろう。だけど、今は明らかにそんな状況じゃないわけで…。
しかも一旦抱きしめてしまえば、たぶん、俺は……
「おしるこ食べたい」
「うん」
「ラーメン食べたい」
「うん」
「一楽で奢ってくれる?」
「うん」
「好きなだけ頼んで良い?一番高いのとか頼んでも良い?」
「うん」
「…………冗談だってばよ」
「うん」
まだ言葉を発し続けるナルトがいじらしくて、可愛くて、愛しくて、本当に抱きしめそうになるのを堪えられた自分を誉めてやりたいくらいだ。そのぐらいにナルトは可愛い。
可愛くて可愛くて仕方ない。
だけど、俺が堪えるのに必死で、ちゃんと相手をしないからちょっと沈んだ表情を浮かべている。
そんな顔も可愛いと思ってしまう俺は、きっと最低なんだろう。
──だけど我慢するしかないじゃない。
ナルトはまだ子供だし、恋愛どころか、他人への執着すら知らないような子なんだから。俺のエゴと欲望を押し付けるわけにはいかないデショ。俺は大人なんだから、このまま抱きしめて俺だけの物にしてしまいたい…なんて我儘は言いたくても言えない。
……言わないけど、俺は小さく溜め息をついた。