B◆巻物◆
□気持ちの名前
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ナルトの視線を辿ると、その先にはカカシがいる。
カカシの視線を辿ると、その先にはナルトがいる。
見つめ合っているわけではなくて、目が合うと途端にナルトの方が先に視線をそらす。でもお互いに、お互いを見ている。
その事に気付いたのはいつ頃だっただろう?
『
気持ちの名前』
スレナル?番外編
カカシとナルトが一楽で一緒にいるのを見て、胸がざわついた。ナルトに誘われたのを断ったのは俺自身であるにも関わらず、だ。
なぜ隣にいるのが俺じゃないのか…。
そう思うと、不可解に胸が締め付けられた。
だけど、サクラや、カカシのついでのように誘われるのは気に入らなかったのだから仕方ない。
俺だけを誘ってくれたのなら、仕方ない…なんて悪態をつきながらも付き合っただろうに。
でもすぐに、そんな気持ちは打ち消した。
何を考えているんだ。自分はおかしくなったのか?と。
そんな事を考えたのは気の迷いだと自分に言い聞かせて、ナルトたちをあまり見ないようにと思ってきた。
だけど、波の国に来てからまた気になりだしてしまったのだ。
波の国に来て数日。
カカシに課せられたチャクラで吸着しての木登り修行も、だんだんと木の先端に近付いてきている。成果が出ていると思えば、なおさら頑張れる気がした。
ふと隣を見れば、ナルトの方も少しずつ俺に追いついてきている。
負けるわけにはいかないと焦るわけではないが、もっと頑張らなければならないのは間違いない。
まさか忍者学校で万年ドベだったナルトに、この俺がそう易々と追いつかれるなんてあってはならない事だ。
「くっそ〜〜」
「賭けは俺の勝ちかなぁ〜」
「うっせぇ!!黙ってイチャパラでも読んでろってばよ!」
「読みながら、指導してやってんデショ!」
「指導なんてしてねぇじゃん!!」
横ではナルトとカカシが何やら漫才をやっているかのようだ。
カカシは今日もナルトを見ている。
そもそもカカシは大体において、本を読んでいるか、ナルトを見ているか…だ。
戦闘中はさすがに周りに目を配っているようだが、普段の単純な任務中は本かナルトにしか目が行ってないように見える。
まぁ、それに気付く程この二人見ている俺も俺だが…それはこの際おいておくとして。
何だかんだ言いながら、二人が仲が良いのは間違いない。
そして、それを見ていると俺の胸がざわつくのも。
──こうしてそんな事に心動かされてしまうのも下らないと思う。
馬鹿馬鹿しいとも思う。
でも、胸に何かが刺さるのだ。
「ったく、静かにしろ…ウスラトンカチ。集中が乱れる」
「うっせぇ、サスケ!!オレだって集中したいのにカカシ先生が……」
「だったら相手にしなきゃいいだろうが」
なぜだろう、言葉を紡ぐ度に溢れるこの気持ちは。
ナルトがこちらを向くと逸る胸の鼓動。
カカシの名を出されると澱む感情。
その正体が、俺には分からない。
だんだんと日が落ちてきて、身体の疲労もかなり溜まってきた。
俺もナルトも息が上がって少し身体がふら付いている。
「ナルト、サスケ。今日はここまでにして、タヅナさんの家まで戻るか〜」
カカシが間延びした声で言う。
ナルトはその場にへたり込んで、俺も大きく息を吐いて木に背を預けた。
深呼吸して息を落ち着けながら、ちらりとナルトを窺えばカカシが近づいて行っているところだった。へたり込んだナルトの腕をカカシが手で引いて立ち上がらせている。
考えてみれば、カカシは見てるだけでなく、やたらとナルトに触るような気もする。
ナルトの方からじゃれて行くというのもあるが。
カカシから頭を撫でたり、手をつないだり、肩を抱いたり。
噂好きの女みたいな真似はしたくないが、つい何か勘繰りたくなってしまう。
カカシとナルトには何かあるのだろうかと。
もちろん、それを聞く気はないが。
依怙贔屓とか言うわけではないのだ。別にナルトが羨ましいなんて思うわけでもないし。
ただ、なんとなく…カカシにとって、ナルトが俺やサクラとは違うんだろうというのが感じられる。
また、ナルトにとっても、カカシが先生である事を差し引いたとしても、俺たちとは違う存在であるらしいのも分かる。
俺はそれが気に入らないのだ。
何でそんな気持ちになるのかは、やっぱり分からないけれど。