B◆巻物◆

□スレナル?A
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カカシの言葉はどれも信じがたい。

オレが今まで言われた事の無い台詞。

そして、言われるはずの無い台詞。

それをどうして信じろと言うのだろう…。

「そりゃ、オレはオレだけどさ…」

でも、現実として『九尾』の入っていないオレなんて在り得ない。きっと死ぬまでオレは『九尾』の容れ物。

『九尾』は『九尾』、『オレ』は『オレ』というよりも、『九尾』も『オレ』も含めて『ナルト』。『演じてるナルト』も『素のナルト』も含めて『オレ』だっていうのと大して変わらない。

『オレ』は所詮『九尾』と言われてもおかしくないのだ。

では『九尾』を好きになれる人間はいるのだろうか。


きっと答えは、否、だ。


「俺がお前を好きなのおかしい?」

カカシがオレを見て微笑む。

おかしいか、おかしくないか、といえば明らかにおかしいと思う。

だって好きになる理由がない。俺の何処にも他人に好かれる要素なんてない。オレはそれをちゃんと自覚してる。

「おかしいってばよ」

俺は今どんな表情をしているだろうか。

笑ってる?

困ってる?

「そうかな?おかしいかなぁ?」

カカシが本人の言うとおり、『ナルト』と『九尾』を分けて考えているとして、オレの事はまぁ良い。『九尾』の事を憎んではいないのだろうか。

だって『九尾』をオレに封印して死んだ四代目は、カカシの担当上忍だったと聞いた。尊敬してたと本人からも聞いた。

そんな大事な相手が死ぬ事になった原因を好きになんてなれるわけがない。

むしろ憎んでて然るべきだ。

憎んでいる方が普通だと思う。だって他の里の人間がそうなのだから、カカシだけが違うわけが無い。

イルカ先生や、三代目だって『ナルト』に優しいだけで『九尾』は憎んでいるはずだ。現にイルカ先生は…『九尾』の夢にうなされていたのを知っている。

だから、カカシの言う事は嘘だと思う。

理由はオレでは想像もつかないが、オレを懐柔でもしようと思っているのだろう。

そうじゃなきゃオレに優しくする意味なんて無い。

「俺から見れば、お前だっておかしいけどね」

「は?」

「欲しいと口にしながら、さっさと諦めてるって顔してるよ、お前は。……子供らしくないね」

そんなに顔に出ていただろうか。

オレはいま笑えてないって事?

感情を殺して笑うのは、少なくとも下忍には通用していた。さすがに上忍には無理だったということなのか。

「どういう意味?」

「具体的に言うとだな…そうだな。お前、火影になりたいと言いながらソレ諦めてるだろ」

驚いて、言葉が出ない。それすら気付かれていたとは思いもしなかった。

何で、ばれてる?

態度に出ていた?

何か失言でもしただろうか?

いや、コレはカマをかけているのかも知れない。ここで動揺したらきっとカカシの思うつぼだ。

「ソレって先生が、オレじゃ無理とか思ってるだけじゃねぇの?オレはぜってぇ火影になってやるんだってばよ!!」

気合を入れて、強気で、元気に宣言してみせる。

カカシは小さくため息をつくと、頭をオレに近づけてきた。驚いて身体を引こうとするが、伸びてきたカカシの腕に止められてしまう。動けずに固まっていたら、カカシの頭はそのままオレの胸に預けられた。

間近でカカシの銀髪が揺れているのが見える。

「か、カカシ先生?!」

「…………んね」

何か、カカシが小さくつぶやいた。

うつぶせだし、俺の胸に埋まってるしで、声がくぐもってはっきりと聞き取れない。

「……れの……い………こ…こそ……」

何なんだろう、いったい。

オレに向かって言ってるのか、独り言なのか。

だけど、動いてカカシから離れようという事を思いつきもしなかった。

この状況が心地いいとは言わないけれど、威圧的でもないけれど、振り払えない雰囲気が確かにそこにはあった。

他人に触れられるのなんて、嫌いなはずなのに、どうしてオレは……。

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