B◆巻物◆

□ずっと、ずっと…
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どうして俺じゃ駄目だったんですか?


俺は何度も貴方の墓の前で問いかける。

手には、貴方が遺したナルトを抱いて。

ぐずるナルトをあやしながら、自分こそ泣きたい気分だった。

ナルトはこんなに幼くて、か弱くて、誰かが守らないと生きていけない。生まれたばかりの大事な子供に、貴方はどうしてこんな過酷な運命を背負わせたのですか?

俺の指を握り締めるナルトの手は、あまりにも小さくて俺の胸を締め付ける。


ナルトに背負わせるくらいなら、俺が背負ってよかったのに。

前もって聞いていたならきっと志願した。

だけど四代目は俺には何も言ってくれなかった。

言って欲しかったと思うのは、俺の子供じみた我が侭なのだろうか。





ずっと、ずっと…






「カカシ、三代目がお呼びだ」

かけられた声にゆっくりと振り返ると、ライドウが心配そうにな顔で俺を見ていた。

ライドウは同期ながら、俺が年下のため何かと世話を焼いてくれる。

それは鬱陶しくもあり、くすぐったくもあるが…今現在においては前者だ。

こんな気分の時は、誰にも何も言われたくはない。

その点、ナルトは良い。

俺に何も言わない。

泣いて手こずらされる事はあっても、あやしておけば黙って俺の側にいる。

俺だけを見て、俺の言うことしか聞かない、可愛い子供。



「…任務の話かな?」

先に歩き始めたライドウの一歩後ろを歩きながら、独り言のようにつぶやく。

ライドウは何も言わず、かわりに俺の腕の中からナルトが声を上げる。

もちろん何を言ってるのかなんて、俺にはわからない。必死に俺の方へと手を伸ばす様はいつ見ても可愛らしい。

抱く角度を変えて、ナルトが俺の指を掴み易いようにしてやる。すぐにぎゅっと掴んできた小さな手が可愛くて、俺は思わずその手にキスを落とした。

俺が笑いかけると、ナルトも笑う。

ナルトが笑っていればそれで、俺は安心できるのだ。



「随分と、扱いがうまくなったみたいだな」

いつの間にか隣に来ていたライドウが感心したように言った。

「お前が世話すると聞いた時は驚いたんだがな。何とかなるもんだな」

「………嫌味?」

「純粋に感心してるんだよ。」

言ってライドウがナルトの頭を撫でる。

その手の動きにあわせてフワフワと揺れる金糸がまた可愛い。それを見ていると、自然と俺の顔は緩む。

「お前、もう落ち着いたみたいだな」

「は?」

「その、……四代目の葬儀の時は死にそうな顔してたぞ、お前」

「そりゃそうでしょ、死にたかったんだから。」

四代目がいなくなったと思ったら、なんだか生きていく意味がなくなったような気がしたのは事実だ。あの人がいたから、あの人を目標にして生きてきた。

あの人を超えることが目標だった。

正義とか、義務とか、そんなもので任務をこなしてきたわけじゃない。四代目を越えるための修行としてしか任務をこなしてきたのだ。

きっといつか越えてみせると思っていたのに、もう決して越えられない高みへと四代目は行ってしまった。

俺は、生への唯一の拠り所である目標を失った。

それでどうして生き続けられるだろう。

俺は全てを放棄して人生の終わりを待とうと思った。

人生に生きる意味は見つけられないけれど、それをわざわざ途中で消す手間をかけるのも嫌だった。

ただ何もせずに、餓死でも衰弱死でも良いから人生が終わってしまえば良いと思った。


そんなときだった。

三代目が俺の元にナルトを連れてきたのは………

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