B◆巻物◆
□スレナル?@
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それは、俺の処世術。
それが正しいと信じてきたし、これからもそれは変わらない。
そう、思ってたけれど。
『
スレナル?@』
今日は班の顔合わせだった。
同じ班になったのは、うちはサスケと春野サクラ。運が良いのか悪いのか、俺がライバル視してる事にしてる相手と、俺が恋してる事にしてる相手だ。
とはいえ、誰と同じ班になろうと、どうだって良い。
いつも通りに馬鹿なドベをやってれば、問題ない。
イルカ先生もそれで安心するし。
馬鹿の方が、いろいろと面倒が少ない。
これまでの経験が、俺にそれを教え込んだ。その為にはいろいろ嫌な思いを重ねたけれど、もう過ぎた事はどうでもいい。
これから先が穏やかに過ごせるなら、それでいい。
馬鹿を演じていれば、サスケもサクラも『仕方ない』なんて言いながら、ちゃんと俺を認識する。
…だから、それでいい。
問題は、はたけカカシだ。
上忍…に、会うのは初めてじゃないけど。
暗部にだって俺は会った事ある。でも…それでも、そいつらと比べても、油断ならない相手だと思った。
たぶん三代目が俺の監視役に選んだのなら、それなりの人間なんだろう。というか、俺が下忍になって監視役でもない人間が上司に付くなんてまず考えられないし。
俺は普通とは違う。
どう違うのかは、最近ミズキの奴に教えられた。
そして、理解した。
俺のこの状況は死ぬまで変わらないのだと。
知るまでは、過去に犯した何かの罪で責められているのなら、忍として任務をこなすうちにいつか許されるのではないかと思っていたけれど。
いつかはイルカ先生と肩を並べて楽しく生きられるんじゃないかと、願ってもいたけれど。
全て、諦めた。
俺が許される日など決して来ない。
俺が生きている限り。
九尾が、俺の中にいる限り……
その俺が、幸運が重なったとはいえ下忍になった。
三代目がしなくても、里の上層部が慌ててそれなりの監視役の忍を付けたに決まっている。俺が忍者学校に入るときも、三代目ははっきりとは言わなかったけれど、相当もめたらしいし。
今もきっと外で誰かが俺を監視してるはずだ。
とはいっても、どうせ気配は感じないし、それならいてもいなくても俺にとっては同じ事。プライバシーだの何だのなんて、気にしたってしょうがない。
知られて困ることなんて、何もない。
俺は、そんな物も、
……そんな物すら、何も持ってない。
不意に、
カラ、と乾いた音がして俺の背後の窓がひとりでに開いた。
嫌な汗が背筋を伝う。
ポン、と肩を叩かれて反射的にクナイを構えていた。
でも、そのクナイは難なく抑えられて、自然と相手と向き合う形になる。睨むようにして見上げた先にあったのは…なんと、その問題の男の顔だった。
気が抜けたような、それでいて別の緊張が走ったような、何だか変な感じ。
とりあえず睨むのをやめると、その男は俺に優しく微笑みかけた。
「そんなに警戒するなよ、ナルト」
「カ、カカシ先生?!……ビックリしたってばよ」
はっきり言って、どういう態度をとればいいのか迷う。昼間と同じ態度がいいんだろうけど、家の中だとちょっと調子が狂う。
俺の唯一の安息の場所なのだから。
せっかく気を抜いていたのに、また『うずまきナルト』を演じなければいけないのかと、少し気が重い。だからといってこの俺の本性を、他人に、ましてやこんな男に知られたくは無かった。
緊張しながらも、知り合いだからとホッとしたような、そんな表情を浮かべてみる。でも頭の中では、カカシが何しに来たのかと考えをめぐらしていた。
俺に用事なんて何も無いはずだ。
会ったばかりだし、監視なら、わざわざ俺と顔をあわせる必要はない。
「驚かせて悪かった。窓が近かったからそのまま来たんでな。」
「……普通、訪ねてくるなら玄関からだってばよ。めちゃくちゃ驚いたじゃんか!」
「ははははは、悪い悪い」
言ってカカシが俺の頭を撫でる。
俺の演技は見破られてない、と考えていいのだろうか。