名探偵

□パートナー2
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「あんなぁ、工藤…。」
平次がコナンによびかける。もう電気を消した寝室では相手の顔もよく見えない。
「なんだよ、眠れねぇのか??」
「…あったりまえやろ!!なにが悲しゅうて、工藤と一緒の布団にねなあかんのや。予備の布団あるんやろ??」

たしかに、一人用の布団に高校生と小学生では、夏には暑すぎる。
「平次が抱っこしてくれたらちょうどいいんちゃうん??」
「どあほっ!!声をかえんなや、きっしょぃ…。」
変声機で和葉の声にかえたコナンに平次が毒づく。その反応を見て、コナンはにやりと笑みを浮かべた。
「なになに??遠山さんの声だとドキドキした〜??」
「アホ…。当たり前やろ、男なんやから。」
「あ、そ。」
平次ならのりでかわしてくると思ったのに、予想外に真剣な答えでコナンは胸がざわっとした。やっぱり、やっぱりお前は…。

「なぁ…。お前って、遠山さんのこと好きなのか…?」
「ふぁ??」
平次は、あくびの最中で声をかけられ、思わず変な声がでてしまう。

「…ぷっ」
「??」
「あはははははは!!おもろいこときくなや、工藤〜」
人が真面目にきいたのに…。
思いっきり笑い飛ばされて、ちょっとカチンとくる。
「別に面白いことじゃねぇだろっ、ちゃんと答えろよ!!」
語気を強めるコナンに、なんやねん〜と文句をいいながら、平次はコナンと真正面に向かい合う形にすわりなおした。
「あんな、工藤…。前もいうたかもしれんけど、俺は和葉のことは…。」

そこでふと、平次は顔を曇らせた。それは一瞬だったが、コナンはそれを見逃さなかった。
「…工藤があのねぇちゃんを想っとるような気持ちとちゃうねん。和葉はただの幼なじみで、なんつぅか…。やっぱ子分や。」

平次のきちんと人の目を見つめるとこが、いい。まっすぐなところがいい。
でも、さっき一瞬悲しそうな顔をしたのは、やっぱり…。
コナンははぁ、と溜め息をもらした。
「いいよ隠さなくて。おめーが遠山さんのことを想ってるなら、素直にそういえよ。」
「だから!和葉はただの…」
「じゃあなんで、あんな切なそうな顔すんだよ!!」
コナンの強い口調に平次はぐっと言葉につまった。

「…ほらみろ。バレバレなんだよ。」
「ちゃう!!それは工藤がっ…!!」
平次はそこではっと自分の口をふさいだ。

「オレ??オレがなんだよ。」
「あ、いゃ…その…」嘘がつけないとこもいい。その眉の形、瞳の色に目を奪われる。

…もう、どうでもいい。
服部が誰を想っていてももう関係ない。

暗がりの寝室に目がなれてきて、平次の表情がくるくる変わるのがよくわかる。
「く、くどぉ、オレ…」
口にあてた手をどけて平次がなにかいいかけるが、「やっぱり…アカン!」と小さく呟いてまた口を塞ぐ。


…もうカンケーねぇ。
「く、工藤…??」
急に小さな体が近寄ってきて、平次はたじろいだ。
そんな様子にコナンは目をすっと細めて呟く。
「…服部。」
「へ?くど…っ!?」

一瞬。
びりっと電気が走って、繋がった唇から平次にも感電するんじゃないかと思った。

ほんの1、2秒のことが、物凄くながく感じられた。
ゆっくりと唇を離したら、平次の呆けた瞳と視線がぶつかる。

…こいつ、目あけたまましてやがったのか…。
コナンは平次の初々しさに心のなかで苦笑した。

「…い、いま、の…。」

先に口を開いたのは平次の方だった。
「今の、く、くどっ…!きっ、キスとちゃうやんな…?」

平次は、耳までうっすら赤く染め、コナンを指差しながら声を震わせる。
「……キス、だけど??」
あくまでもポーカーフェイスを装って、コナンは口角をあげてみせる。
思わず口づけをしてしまったが、ここで主導権を平次に握らせてはだめだ。今までの関係が保てる程度に崩壊はとどめたい。なんとかごまかしきらなければ。

「…っ!ちゃうっ!!キスっちゅうんはな!!好きあった男女が交わすもんやぞ!?…いくらアメリカ長かったからいうても、これはやっぱり…おか、し、いんとっ…ちゃ…ぅかぁ…。」
「は、服部!?」

まさか、あの負けん気の強い平次が…

泣いてる…!?


ヤバイ。まさかここまでショックをうけさせるとは…。冗談で済ませるという選択肢が消えかかってくる。
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