小説
□雨
2ページ/3ページ
雨が嫌いだった小さい頃。
教えてもらったことがある。
「零時。雨が嫌いなのかい?」
「うん…キライ」
「どうして?」
「うるさいから。」
「…じゃあ、雨が降る理由って知ってる?」
「え?…自然現象…だから?」
院長先生は俺に優しく微笑んだ。
「雨はね?誰かのために降るんです。」
凄く印象的だった。
「誰かの…ため…?」
「そう。誰かが流す涙のためにね。零時…貴方なら思いやる気持ちが解るでしょう?」
「じゃあ…今も誰かが泣いてるの?」
「かもしれませんね…。」
俺はこの話を聞いてから雨がキライじゃなくなった。
雨が誰かのために降るなんて半信半疑だったのは確かだ。
でも、実際にあいつが泣いていた時に確かに雨が降ってきた。
慰めるように、
涙を隠す様に、
思いやり、一緒に泣いていた。
「誰かのために降る」
そんなのも、ありなんじゃないかと思った。
慰めの言葉をかけるように、雨が降り、メロディーを奏でる。
素敵だと思う。
俺は雨が降る度に
「泣いている人に笑顔が戻りますように…」
願い、雨と一緒にメロディーを紡ぐ。
⇒後書き