小説

□久々の訪問者2
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学生達は実験データを採取している。
俺は傍らで、いつも通り論文をパソコンで仕上げていた。
すると、女子生徒に肩を叩かれた。
声を出さず眼鏡越しに女子生徒を睨むと、頬が赤らむ。
女とは訳が解らない。
だが、たいていこれで怯み、諦める。
俺はそのまま仕事に戻る。

が、今回は違った。


「せ、先生…お客様です。」
「…あ゛?……また奴なら返せ。」
「いえ、別の方です。」
「…?」


ため息を吐きながら仕方なく立ち上がり、ドアに向かった。


「……ったく…アポなしの野郎なんて何処のどいつだって───…」

───ガチャッ

「ちわー!雪騎!元気にしt───」

───バタンッッ

「……………」


何か悪いものが見えた…気がする。
ものすごい面倒くさそうだ。
いや、面倒臭い。


───ドンドンドンッッ!!

「雪騎!?ちょ!なんで閉めるんだよ!!せっかく会いに来たのに!!どういう仕打ちだ!」


また昔の知り合いが来やがった。
しかも今度は面倒臭い奴。
何でこんな奴の知り合いなんだ!
頭が痛くなりそうだ。


「…はぁ…」

「雪騎ぃ〜!?雪騎君!?白渡雪騎!!せっちゃん!!白渡センセ───…イタッ!」


ドアの近くに居たらしく、ドアを開けるとぶつかった。
俺はうずくまるのを開けた隙間から見ていた。


「…阿呆かあんたは。」
「雪騎が悪いんじゃないか!!」
「……用がないなら帰ってください。俺は忙しいので。」
「ちょちょちょ!」


閉めようとしたら隙間にブーツを挟んできた。
しぶとい野郎だ。


「いーじゃん!せっかく遊びに来たんだから昔話に華を咲かせようじゃないか!」
「お断りします。」
「ちょっとは名の知れたカリスマ美容師がわざわざ遊びに来てんだぞ!」


わざわざって言うなら来なくていいっての!
ドアの前で騒がれても…もう騒がれまくってるが。
仕方ないので中に入れてやった。


「あーもー!相変わらずツンデレだな!」
「意味が解らん!ってか何しに来たんですか翆先輩。」


この人は宮成 翆。
大学の先輩だった。
大学院まで進んだにも関わらず、院を卒業した後はあっさり方向転換して美容師になったらしい。


「ははっ!先輩なんてやめろよ。結局そういう道にも進んでねーし。自由でいいよ。」
「……わかった。で?何?」
「…切り替え早いな…お前…」

───コンコン…ガチャッ

「お邪魔します。」


誰かと思えば勝手に入って来やがった。
生憎、俺の機嫌を直せる連れは居ないようだ。


「あ!萩由!」
「お久しぶりです、宮成さん。」


ニコニコと二人は会話に華を咲かせていた。
俺は眉間にシワが寄るばかりだ。あーもー……本当に頭痛がしてきた。


「…お前まで…何しに来たんだ…」
「いやー、雪騎の部屋に人だかりが出来てるから何か有るのかなぁと思いましてね?そしたら見事にビンゴでしたよ。」


窓を見てみるとアイドルを見るかの様な目線を送る女子の人だかりだった。


「………………何だこれは……」


俺が驚愕している傍らで、一人は手を振っているし、もう一人はのんびりしている。


「わー!久しぶりにモテ期到来ってやつ?嬉しいねぇ!」
「馬鹿言え!ってかお前らのせいだろうが!」
「まぁ…確かに生徒さんに雪騎の場所教えて貰ったけど。」
「これじゃあ実験に専念出来ませんね。」
「場所変える?」
「てめーらが帰れば良いんだよ!」


俺の話しも虚しく萩由は学生達に話しを付ける。


「危ない実験でもなさそうですし、この人借りていきますね!何かあったら連絡してください。」
「俺にはまだ論文が…!」
「大丈夫大丈夫。雪騎なら明日でも仕上げられるって!」


そういうなり、二人が俺の両腕を掴み引きずる様に連れ出された。


この後俺の不機嫌がフルMAXだったことは言うまでもない。

奴らが来るなんてもう懲り懲りだ!






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