小説

□棘過去出会い話
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あの光りを見た後、俺はずっと眠り込んでいた。
そして、意識が徐々に戻って来た。
安らかな音楽が聞こえる。
目を開けようとすると、目に入ってきた光りが眩しい。
やっと馴れ、辺りがぼんやりと見えた。

片付けられた部屋にブルーのラジオ。
音楽はここからだ。
部屋の主は音楽好きらしく、いろんなCDや音楽雑誌が並んでいる。
掛けてある衣類からして男らしい。
だが、何故かぬいぐるみが置いてある。
しかも2体。少しミスマッチだ。

俺はというと、ベットに寝かされている。
よく見ると、治療が施してあり、左肩から右脇腹にかけての傷は包帯がしてある。
その上から甚平のような羽織りものを着さされている。
下は誰かのジーンズだ。


「…っつ!!」

体を起こそうとしたとき、痛みが走る。
流石に治ってはいないのは分かっているが、予想以上の痛みだ。
ベットにすぐ逆戻り。
そして徐々に感覚を取り戻し、痛みが襲う。


―――カチャッ…


苦痛に堪えている所に誰かが来た。
ちらっと見ると女の子だった。
水を持って来たらしい。
女の子は俺が起きている事に気付き、慌てて誰かを呼んだ。


「!!しゅ、萩由さん!」

バタバタと数人の男が集まって来た。
その中でも女の子に萩由という男らしき奴が問う。


「どうしました?雨璃?」
「あ、あのっ…!!」
「あー!!生きてるよあの人!!」

青黒い髪の男が指差す。
にしても、生きてるのは当たり前だ。
人を勝手に殺さないでほしい。


「嘘?マジで?」
「へぇ〜!!瀕死だったのに?」

赤黒い髪の男と少年もドアの前に寄ってたかる。
人に見られるのはいい気がしないものだ。
痛みに堪えながら、上半身を起こした。


「…くっ!!」
「あ!無理しないで下さい!!」

萩由という奴が俺を制止する。
だがその制止も聞かず、立ち上がる。


「…っ!!…世話になったな。」

傷口は痛むが歩けない事はなかった。
ドアにいた3人も払い、刀を手に取り、玄関に向かう。


「おい!零!?」
「ちょ!?そんな体で何処行くんですか!!」

俺の前に青黒い髪の男が両手を広げ、2度目の制止をする。
そこへ、赤黒い髪の男が零と言う奴を止める。


「ちょ…零、止めとけって…」
「だけど、まだ傷が…」

傷口を見ると少し滲んできている。
開きかけたのかも知れない。


「…悪いが帰らせて貰う。」
「ちょっと待って下さい。」

ガシッと刀を持った俺の手を萩由が掴んだ。
さっきとは別の雰囲気を纏っている。

目から怒りの迫力が感じられる。


「いいですか?
貴方の前に居る二人は、わざわざ瀕死の貴方を連れて帰ったんですよ!?
ここに来るまでに何度もケアーをかけながら!
だからまだ貴方は生きる事が出来たんです!

分かってますか?

今、そんな状態で外に出れば野垂れ死ぬ事は目に見えています。
貴方は僕らの苦労を水の泡にするつもりですか?」


睨まれ、その迫力に少したじろく。
その時、後ろから服を引っ張られた。


「……行かないで…ください…」

目に涙を溜め、縋り付く雨璃という女の子だった。
振り払う訳にも行かず、戸惑う。


「お兄ーさん、ここは素直に治すしか無いんじゃない?」

にこにこと少年は笑みをたたえて俺に問う。
回りを全て囲まれ、あげくの果てに縋り付かれている。
逃げ場は何処にも無いようだ。

「〜!…はぁ…物好きな奴らだな。……好きにしろっ…」




こうして、俺は助けられたついでにこいつらの仲間になった。













―――――END―――――


⇒あとがき&おまけ
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