小説

□棘過去出会い話
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いつからかは覚えていないが、俺は独りで生きてきた。
物心付いた時にはプレハブみたいな簡単な今の家に独りで住んでいた。
護身用に使っている刀と、必要最低限だけの家具のみの家。


一歩外に出ればそこは森の中に。


街に住んでいた事もちらほら覚えているが、記憶が定かではない。

もしかしたら、誰かと住んでいたのかも知れないが、今は俺独り。


今や習慣付いている朝食や家事を終え、気が付けば食料はほとんど無い。

(…仕方ない…)

食料を調達しに刀を持ち、出かけた。

モンスターがたまに出現するため人が余り立ち入る事がない。
そのせいか、食料として食べられる物は沢山ある。
いつも行き慣れた道を進む。

しかし、いつも通り簡単に通れそうにはなさそうだ。

目の前にはオオカマキリ。
通常よりやや小ぶりだが、約2mもあれば十分にでかい。


―――カチャッ


刀の柄に巻き付いている布を手に一巻きして柄に手を掛ける。
オオカマキリも鎌を構え、戦闘体制に入った。
間合いは十分。じっと睨み合いが続く…。

先手を切ったのはオオカマキリの方だった。

鎌を大きく振り上げ、俺に向かって振り翳す。
避ける間にもう一撃が俺を襲う。それを鞘で受け止め、跳ね返す。
よろけて体制を崩したのを見逃す、鎌の付け根を狙い撃つ。

敵の鎌が一つ切り離された。

痛みに任せ、やみくもに追撃する鎌をかわし敵の懐に入った。
心臓部目掛けてブスリっと一差し。

敵は悲鳴とも似つかない声をあげ、それでもまだ俺に襲い掛かる。

俺は布を伸ばしつつ、攻撃を回避し後方に下がった。
そして、布を思いっきり引っ張り、血飛沫とともに刀が俺の元へ帰って来たのをキャッチした。

敵はというと、心臓部から血を流し、ゆらゆらと立っていた。
だが字の名の通り虫の息だった。



―――ドズゥゥンッッ…



ついに体が堪えられず、地面にのめり込むかのように倒れた。
俺は刀に付いた血を払い、鞘に戻した。
生きてるとも限らないため、用心しながら近付く。


「……。」

息も無くそこには土に帰る物体だけが残ってた。
しばらく立ち尽くしていた時だった。
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