小説
□雪騎と萩由
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「何か要りますか?」
「……いや、いらん。」
最近、ほぼ毎日というほどこいつが通いつめて来ている。
こいつ = 萩由だ。
元クラス、研究、サークル仲間。
そして、親友だった。
…と、思う。
少なからず、俺はそうだと思ってた。
「…で?今日は何しに来たんだ?さっさと帰れ。」
「相変わらず冷たいですねぇ。」
俺の言葉を慣れたように受け流しながら、学生の実験レポートを見ては片付けている。
「勝手に見てんじゃねぇよ。」
「卒業レポートぐらい良いじゃないですか。」
「良くねぇだろ。」
かと言って、レポートは見たら放置。
何故か?
…毎年毎年提出される身にもなってみろ。
片付ける暇などない。
「……。」
―――カタカタカタ…
「……。」
―――カサッ…カサッ…
作業する音だけが聞こえる。
ふと、いつもの疑問が浮かんだ。
今は授業中。
学生が入ってくる事はない。
「…なぁ。」
「はい?」
あいつは片手にレポートを持ちながら、振り返った。
「…お前は…何で俺と顔を合わせられるんだ?」
「……。」
妹が死んで以来、久々に顔をちゃんと見れた気がする。
あいつは一瞬目を見開いた。