小説

□節分
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「棘!少しは手加減しても良いんじゃないの!?」

一向に当たらない棘に内心腹が立ってきた剞曄。

「まぁ、棘さんに当てるのは難しいんじゃないかな?」

とりあえず、誰に当てるでもなく撒いている伉。
棘と剞曄の追いかけっこを見守っていた。

「それ!鬼に当てないと意味ないじゃん!」
「そもそも棘さんが鬼な時点で当たらないよ。」
「…くっそ!おらー!」

追いかける剞曄の何度目かの攻撃。
それもひらりとかわす。
かわされた後ろには生憎、人がいた。

「っ!?」
「きゃぁ!?」

杜蓮が庇うようにして露葉を守った。

「…ちょっと!剞曄!!やったわね…!」
「げっ…そこにぼーっと立ってるからだろ?」
「私だけじゃなくって兄にも当てるなんて…!」
「っていうか、杜蓮さんは鬼だし…。」

伉の言葉も聞かず、剞曄と露葉はそれぞれに豆を投げ合い始めてしまった。

「やれやれ。」
「まったく…。」

伉と杜蓮は顔を見合す。
そして、互いに鬼のお面と豆の入った升をチラ見し、目線を戻す。

「…」
「…」

杜蓮が歩きだしたと同時に伉は豆を投げ、それを振り向きざまにパシッと杜蓮は掴んだ。

「「鬼はー外ー!福はー内ー!」」

立ち止まっていた棘に零時達が豆を投げてきた。
相手をしていたはずの誨はというと、ギブアップして緋月と縁側に腰をおろしていた。

「…増えたか。」

逃げ回っているうちに杜蓮と棘は背中合わせになってしまった。

「今がチャーンス!」
「おりゃあ!」
「鬼はー外ーー!」

四方八方から豆が降ってきた。

---スパンっ
---シュンっ

その豆は一瞬にして砕けた。

「あ。センセ、あれ。」
「あん?んな騙しに乗るかよっ!」

よそ見する達己に雪騎が投げるがやはり当たらない。

「あっ…雪騎さん!」
「ん?どうし…って!」

達己の指差す方を見た雨璃は雪騎の服を引っ張った。
釣られて見てみれば、棘と杜蓮が武器を持っていた。

「コラー!!武器は使用禁止だー!」

すかさず駆け寄る雪騎。

「じゃぁ、お兄さんはそろそろ帰ろうかな。」
「ありがとうございました」
「じゃぁね、雨璃ちゃん」

棘と杜蓮を叱る雪騎を余所に達己は雨璃の頭を撫でて去っていった。

「あーあ。あいつら、アホだねぇ〜。」
「まぁ、負けたくは無いんでしょうね。」

縁側でのんきな会話。

しばらくは棘と杜蓮が雪騎に叱られるという珍しい光景があった。
その後、恵方巻きをみんなでおいしく食べたとか。



おしまい。


―end―

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