小説

□節分
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「あれ?萩さんは?」
「あぁ…あいつと尚惟さん、要那士は恵方巻を作るから不参加だ。」
「なんかずるくね?」

ぼやく誨が箱から紙を一枚とる。

「飯抜きで良いなら参加させるが?」
「いえいえ!是非作っててください!!」
「まぁ、年分食べたら大豆がご飯代わりになりそうだけどね〜」

はははっと緋月(ひづき)が最後の紙を取る。
全員取り終わったところで、全員が紙を開く。

「鬼って書いてあったやつが鬼だ。」

ぺラッと白紙の紙を見せつける雪騎。

「どうだった〜?」
「白紙だ。」
「おれもや!」
「俺もだ。」
「セーフ!」

きょろきょろと利玖が緋月を探すと、後ろからそっと覗く。

「ん?なんだい?」
「…兄貴は鬼なのかよ?」
「いや、無事豆まきだよ。」
「ちっ」

悔しそうに顔をゆがめる。

「兄さんと追いかけっこしたかったのかい?」
「するかアホ!!!」
「つれないなぁ〜」

利玖が零時たちの元に戻るのをにこやかに緋月は見ていた。

「ラッキー!」

ぱっと萩由と雪騎に白紙を見せつける友。

「ちっ。運強いな。」
「へへーん!翆さんは?」
「大丈夫、豆まき参加だよ!」
「あちゃー!」

雪騎が誨に近づき、紙を見てにやりと笑う。

「はんっ、タバコ吸ってた罰だな。」
「ご愁傷様です。」
「良いなぁ…俺もそっちに混ざりたかった!」

恵方巻と巻き寿司の用意をしながら萩由と要那士が声をかける。

「要那士、全然変わるけど?」
「いやぁ〜、鬼は良いや。」
「なんだよ…!まったくー!老体に鞭打つき?」
「お前俺より若いだろ。」
「十分仕事で疲れきってるっての!」

まったくーっと言った感じで誨が腰に手を当てる。
誨が隣に居た伉に声をかける。

「あ、伉はどうだった?」
「俺も剞曄も白紙ですね。」
「当り前でしょ!僕が鬼だなんて、そもそも許されないよ!」

髪の毛を払い、なびかせながら答える剞曄。

「棘さんと杜蓮さんはどうだったんです?」
「…鬼だ。」
「…」

棘がひらりと見せた紙には「鬼」の文字。
そして気まずそうに見せた杜蓮の紙にも「鬼」の文字が見えた。
それを見た露葉は持っていた升を落としそうになるところを棘が間一髪で受け止める。

「ちょっと!兄が鬼ってどうゆうこと!信じらんない!!」
「つ、露葉!」

雪騎に攻め寄ろうとする露葉を杜蓮が引きとめる。

「俺は仕組んでない。それを引いたのはそいつ自信の運だ。」
「そうだよ、露葉。これを引いたのは俺だから!」
「兄…」
「ま、仕方ないよね。」

さらっと言う剞曄にキッっと露葉が睨む。

「っていうか!そもそもあんたがあんなこと言うから引いちゃったんじゃない!」
「なっ!僕のせいかよ!?」
「あんたのせいよ!!」

ぎゃぁぎゃぁといつもの様に剞曄と露葉の喧嘩が始まってしまった。

「…まったく…」

それをしり目に誨、棘、杜蓮に鬼のお面が渡される。

「おや、面白いことをしてるねぇ?」

縁側の窓に寄り添いながら声をかけてきたのは達己だった。

「あんた、来てたのか!」
「声をかけてくれないなんて釣れないね。白渡センセ?」
「……情報屋の方が忙しいかと思ってね。」

眉間にしわを寄せて萩由を見る。
萩由も予想外のことだったらしく、びっくりしていたが、尚惟の方を見た。

「尚惟、あなたですか?」
「…申し訳ありません。達己様がお聞きになるものですから…」

元執事の尚惟は綺麗に腰をおり、萩由に謝る。
達己は尚惟の知り合いで、よろず屋としてるフリーター。
裏では情報屋として動いていて金でしか動かない。
ただ、気まぐれでつかめない人物だ。

「鬼役ならやってあげるんだけど?」
「言っとくが、金は一切出ないぞ。」
「ははっ!大丈夫、依頼じゃないからね。」

難しい顔をしていた雪騎だが、仕方なく達己にお面を渡した。

「外に出てから豆は撒いてくださいね。」

萩由に言われ、鬼と豆まき役が外に出ていく。
縁側に立った雪騎が仁王立ちで全員に指示する。

「拾った豆と升は投げないこと。鬼は逃げてもOK。ってことで、開始!」

わぁーっと一斉に鬼が逃げだし、それを追いかけて豆を投げだす。

「鬼はー外ーー!福はー内ーー!!」
「鬼に投げるのはほどほどにな〜。」

雪騎の声も届いてるのか届いてないのか。
節分と言うより、豆まき合戦が始まっている。

「誨さん隙ありー!」
「おっと?」

ひらりと豆をかわす誨。

「お兄さんに豆当てるなんて百年早いよ?友くん」

決めポーズを決めたところに豆の総攻撃が来た。

「…ってぇ!?」
「誨兄ぃ、油断してるからだよ!」
「…鬼は外!」

双斬と来憧からの豆の洗礼だった。

「まったく!お兄さんがカッコよく決めてんのに!」
「「まて〜〜!」」
「こっちだ!」

逃げる誨を双斬と来憧、そこに零時が加わって追いかける。
みんなを縁側から見渡す雪騎に雨璃が近づく。
同世代の琉依と一緒に豆を蒔いて居たが、戻ってきた。

「雪騎さんは、投げないんですか?」
「雨璃。」

しゃがみこんで雨璃の頭をなでる。

「そうそう、センセは参加しないの?」

鬼のお面を頭の横に付けた達己が暇そうに立っていた。

「参加するつもりはなかったんだが、あんたを見て気が変わったよ。」

山盛りに豆をもった升を持ちだした。

「へぇ?それ、俺に当てる気?」
「当り前だ!その余裕が気に入らないいんだよ!!」

不意打ちで投げた豆をひらりと達己がかわす。

「鬼さーんこちら、手ーのなる方へ?」
「鬼はテメぇだ!雨璃、琉依、いくぞ!」
「は、はいっ!」
「わ、わわっ!!」
「翆、食ってないで加われ!」
「ん!」
「いってらっしゃーい」

雪騎は雨璃と琉依、巻き寿司をつまみ食いした翆を引き連れ、達己に豆を投げ始めた。
緋月は事の行方を見守っていた。
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