君にしか見えない

□小さな少女
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とある家庭でのありふれた風景。その少年宅でもありふれた1日が幕を開けようとしていた。


ジリリリリリリ

「うむぅ〜…。んん〜…」

景気よく鳴り出す目覚まし時計。その毎日の様に聞き慣れ耳をつんざくような音は、このせっかく堪能していた心地よい夢の世界から現実へと引き戻される不快感を感じずにはいられなかった。

「むぅ〜…もうちょっと……」

うるさい目覚ましのいななきを少しでも遮る為に布団を頭から被る。だがその努力も実らず音は一向に不快音として耳に入ってくる。

これが俺の毎日の朝だ。仕方なしに起き上がり目覚まし時計を止める。一度目を開けてしまったらまた目を閉じる気にもなれず階下へ朝食をとろうと部屋から出ようとする。

そこでふと思う。昨日の小説の内容が脳裏をよぎる。しかし、今朝も変わった様子もなく女の子がおはようと目覚めの挨拶をしてくれる様もなかった。やはり単なる夢物語であったことを悟る。内心がっかりはしているが…。

「やっぱり…て何言ってんだかねえ。所詮はただのフィクションノベルなんだよな」

苦笑しながら部屋から出ようとした時、ふと声が聞こえた…ような聞こえなかったような。
俺はちょっと気にかかり後ろを振り向く。だが別に何かがいる風もない。気のせいなことが分かると部屋から出ていく。
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