炎の紋章小説
□家族を望む者の夢
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ゼロカム♂夫婦だが最初だけゼロ×女性・カムイ×女性夫婦な描写があります。相手はぼかしているのでご自由にどうぞ。
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『お父さーん!』
あぁ、あれは愛しい子供の声。満面の笑みを浮かべる俺の守るべき家族。駆け寄ってくる子供はまだまだ小さくてそれでも懸命に俺に‥否、側でその子供を愛しそうに見つめる俺に駆け寄った。抱き上げればキャッキャと笑うその子供は確かに俺の子供。
傍らには子供よりも更に大切な俺の伴侶が‥。
伴侶はまだ小さな赤子を抱き、隣の子供の声を聞き同じくキャッキャと笑う伴侶によく似た子供。優しく微笑む顔は赤子に向けられる。そして‥。
『───!』
『───!』
俺と伴侶の声が重なり、しかし決して俺の名を、伴侶の名前を言わなかった。
駆け寄ってきたのは、子供達の母親。俺の妻、そして伴侶である筈のカムイの妻‥。
違う
違う!
違う!!
俺の守るべき、大切な家族はカムイだ!!
その声は届かず、俺はその女と共に子供と戯れ、カムイは赤子を女に託し優しい笑みを浮かべるその女に優しい笑みを返していた。
「ゼロ?」
「っ!!?」
飛び起きるように身を起こした。全身は汗で濡れ、動悸は激しく息が整わない。
さっきのは夢だと確信した。あれはただの妄想だ。
否
有り得る現実だ。
カムイと共に赴いた別の星界でカムイは女と結婚して夫婦となりカムイそっくりの女の子をもうけ、俺も女と結婚し反抗期真っ只中だが守るべき愛しい娘をもうけていた。
それは、カムイから未来を奪わなければあり得た現実。
次第に冷めてく頭で、だが心が痛すぎて隣にいるカムイを抱き締めた。
「っ、ゼロ?」
「カムイ‥!」
華奢だが剣を振るうための整った体は確かに愛するカムイのもので。女と違う柔らかさがなくとも愛しい感触と甘ったるさがない優しさを含んだような匂い。
すべてが愛しい、愛するカムイのもの。
だが‥、
「ふふ。ゼロ、苦しいよ?」
笑うが少し苦しそうなカムイに少しだけ拘束を緩める。
ポンポンと背中を優しく叩くカムイ。
愛しい、大切な家族
だが‥
「カムイ、」
「何?」
「‥子供は、欲しいか?」
「‥ぇ?」
あの夢の中で、あの世界でカムイは幸せそうな顔をして子供を見ていた。
決して自分に向けたことのないものではないが、やはりどこか、何かが違って見えた。
否定してほしい。
でも、他の兄妹や仲間が結婚し子供をもうけ、秘境で育ち成長した子供達が仲間に加わる度に‥、カムイの眼差しがそれに酷似するのを見ていた。
元来子供好きなカムイだ。自分に子供がいたら確実に愛情を注ぐのは分かっている。
でも、その未来を奪ったのは自分だ。そして自分もあの夢や世界での愛娘を失った。
それでも一番に愛しているのはカムイで、子供には悪いがどんな事でも優先するのはカムイだ。愛さない訳はない。でもこの心はカムイだけなのだ。
「そうだね、もしできるなら欲しいかな?」
心臓が止まったと思った。
いや、全身がまるで一瞬にして凍ったと思う程、心が痛んだ。
欲しい‥?
やはり、望むのか?
あの日だまりの如く優しいモノを
「そ、う‥だよな‥。」
「ゼロ?」
「やはり、子供が欲しいか‥。」
「ねぇ?ゼロ?」
絶対的に成し得ない。同性で子供など成せる訳がない。その身体に精を流し込んでも、例え逆に此方が受け入れても成すことなどあり得ない。
「ねぇゼロ!どうしたの?!」
カムイが何かを言ってる。
でも遠くて聞こえない。
「なら‥、別れよう。」
「っ?!」
息を飲むのは表情でわかる。
でも口から出るのは止まらない。
「そうすればアンタは正しく女と結婚し、子を成し、王族として正しい道に戻れる。」
「ゼロ?!」
「俺は、アンタを誤った道に進ませた罪で殺されるかもな。でも、アンタが望む子供ができるなら、本望だ‥。」
「ゼロ!聞いて!ねぇ!!」
愛するカムイに子ができたらそれは確かに本望で、一緒に居ることは出来ず地獄に堕ちてもずっと愛しているだろう。
「ねぇったら!」
「だから‥、」
「ゼロッ!」
無理矢理カムイに目を合わせられ、やっと自分が何を口走ったのか理解した。
そしてカムイを見た。
「な、んで泣いて‥?」
「ゼロが、僕を泣かせることを言ったからだよっ!」
ポロポロ流す涙があまりに綺麗で、しかしそんな涙は見たくなかった。
「カム、イ‥。」
「ねぇゼロ、聞いて?確かに子供が欲しいって言ったよ?でもね?ゼロをなくしてまで欲しくないよっ!」
「っ?!」
すがる様な泣きつく様なカムイの言葉に息を飲んだ。。
「できるなら確かに欲しいよ!この身体が女ならどんなに良かったかなんて、何度考えたことか!」
「?!」
「でも、結局僕は男で、君に‥、家族をつくってあげることが出来ない‥!」
「っ!!」
カムイの独白に驚く。
たんに子供が欲しいのではなく、俺に家族を作るために欲しいのだと知り、息を飲んだ。
すがるカムイはなお言葉を続ける。
「僕、最近夢に見るんだ。君と僕が別の女性と結婚して子供を授かって幸せそうにしている夢や、僕が女で子供が授かる夢‥。どんなに羨ましいと思ったか‥、悔しいと思ったか‥。でも夢から覚めて隣に君がいて凄く安堵した‥。こんな家族を創ってあげられない僕を愛してくれる君が居てくれて‥。」
カムイも、そんな夢を見ていたことは知らなかった。苦悶の表情を浮かべる時が時折あったが、それは敵対する白夜王族達の夢かと思っていたし、魘されるカムイの手を握りしめると直ぐに穏やかな寝顔に変わっていたから。
「カムイ‥、すまない。」
「ゼロ‥。」
「そんなに愛してくれるお前に、別れようなんて酷いことを言った。本当にすまない‥。」
「ううん。僕も‥、君の気持ちも考えずに酷いことを言っちゃった‥。ゴメンね‥。」
「カムイ‥。」
労るように慰めるように抱き締め、改めてカムイを意識した。
この優しい匂いも感触も、カムイの全てが、決して離しがたい大切なものであると。
「もう嘘でも別れようなどと言わない。だからずっと傍に、居てくれ。」
「うん‥、傍に居るよ。別れようなんて言われても、ずっと傍に居るから‥。」
繋がれた手を一層強く握り抱き締める腕も離さないようにカムイを感じると、
『2人が仲良くしていたらあたし達は嬉しいよ!だから安心してねお父さん達!』
『逢えなくて寂しいけど、2人が一緒ならあたしはそれで良いの!別れたら承知しないんだからね!』
ふと、そんな声が聴こえた。
END
**後書き**
幼少期エポニーヌはやっぱりゼロに甘えただと思う。その頃はカンナちゃんはまだ生まれたばかりだと思う。そんな年齢差にしたい。
最後の締め括りが分かんなくなったので2人に出てきてもらいました。
その内生まれた場合の支援会話文書きたいです。
本当はカムイ視点も書きたかったんだけどやめた。
碧夜はゼロカム♂の子供はエポニーヌとカンナちゃん押しです!!