炎の紋章小説
□月下の夜
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カムゼロっぽいゼロカム
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秋の夜長に鳴く虫の音を聴きながらカムイは城壁の高台へ向かっていた。
「ゼロ!」
「カムイ様。」
星界にあるこのキャッスルにも月がよく見える場所がある。それを見つけたのは彼が居たからだ。
その場所でキャッスルの景色や月夜や空を見ながら他愛もない会話をするようになったのはつい最近。からかわれたり突き放されていた最初の頃よりも、今の他愛もない会話をしたりただ一緒にいるだけの無言の空気も心地好くなってきたのもこの頃だ。
そして月が輝くのを見るために此処に来てみれば、軍の中で一番月を見るのが好きと言う彼が此処に居るのは明白だった。
「綺麗な月だね。」
「ああ。此処はよく見える。」
「うん。」
軽く会話をして、直ぐに空を見上げる。
暗夜でも月は見えるが其れは余程月が高く昇る時期だけで、普段は常のように暗く星々が見えるだけだ。この様に大きな月を見るのは、まして窓越しではなく直に見るのはそう多くはない。
「・・・」
「・・・」
ただ月を見上げ、会話もない沈黙だがそれが心地よく思う。さぁ‥、と流れる風とチリチリと鳴く虫の音だけが響く。
「‥カムイ様。」
「‥何?ゼロ?」
沈黙を破った声は此方を向いていたが彼は月を見続けていた。視線を月からゼロへ移せば、月の光に照らされ銀糸の髪がキラキラと輝く。深海を想わす青い瞳に月が映り込み水面に浮かぶ月のように見える。
その横顔が酷く美しく、そしていつも以上に格好良く見えてドキリと心臓が高鳴った。
「月が、綺麗だな。」
月を見上げて綺麗と言うのは数分前の自分と同じで、しかし何処か憂いを帯びているようにも見える。
そしてゼロはカムイに向き合った。射ぬかれた様に何処かざわついたものが背筋を駆けた。
「月が、とても綺麗だ。」
その眼差しはカムイに注がれている。月明かりに照らされたカムイもまた、否、それ以上に神々しさを纏うのは彼だけは知らない。
不意に伸ばされた手は壊れ物に触れるかのようにカムイの頬に触れる。
風に当たり冷えた頬にはゼロの手の温もりが心地好い。
「月が、綺麗だね。」
頬に触れる手に自分の手を重ねる。
息を飲む音が聞こえた。
自分の頬が手の温もり以上に熱くなるのを感じた。
「カムイ、様。」
「何?」
月明かりに照らされたゼロの顔は喜色を帯びていて、カムイの顔も喜びを浮かべている。
「少し、大人の話をしようか。」
END
**後書き**
本当は中秋の名月にやるつもりだったがとんと忘れてたもんでモダモダしてたらこんな中途半端に‥orz
カムゼロに見えてゼロカムです。このカムイ君、引きこもりが過ぎて本読み漁って文学小説とか読んでる設定。
A→Sって感じ?になってるのか分かんなくなった‥。