零式小説
□人と人形の恋愛
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抱き締めた、自分より小さな身体は冷たくて、人の形をしているのに人ではなくて‥。
しかし、それすらも‥。
「好きだ。」
カトルは抱き締めたまま、一回り小さな人物‥、に囁く。
虚ろな眼のままマキナは口角だけ僅かに上げ、嘲笑うかのような表情でおどけてみせる。
「‥誰が好きだって?」
「お前が好きだ。」
「俺?」
「あぁ、そうだ。」
聞き返してみても直ぐに答えが返ってくる。
俺が好き?
「どの俺が好きなんだ?」
「お前の全てだ。」
「‥すべて?」
すべて‥、は何だ?俺の、何?
カトルによって動けない体は身動ぎすらさせず、ただマキナは浮かぶ疑問を問う。
「ルシのお前も、朱の魔神のお前も、笑うお前も泣くお前も、虚無のお前も‥、“マキナ・クナギリ”が好きだ。」
「‥、」
僅かに息を呑む。
朱も消えそうで、感情もあやふやで、ルシとなりすべてが削げ落ちそうな“マキナ・クナギリ”が好き?
もはや“好き”すら解らない‥。
そしていつの間にか、此処まで忘却しつつあることに驚愕した。
「お前である全てが愛しい。お前が何であれ、お前が、“マキナ”が愛しい。」
“マキナ”?
あぁ、この身体か‥。
でも、今に至るまで‥、消えそうになるすべてまで、アンタは俺を知らない‥。
僅かに身動ぎするマキナだが、体格が上回るカトルによって動くことすら叶わない。
「アンタは俺を何も知らない‥。」
そう、白虎を憎む(憎んでた)俺、朱の領土で過ごしていた俺の時間、幼馴染みに向ける(向けていた)感情、白虎に(0組に)殺された兄との溝、12の魔神との僅かな時間、そして‥、アンタを愛そうとする失いかけてる感情も知らないのだ‥。
ピクリとも動かない体。更に力を加え、強く、離さないように抱き締められる。
「ならば全てを教えてくれ。私が知らない“マキナ”を、お前すら知らない“マキナ”を‥。」
抱き締めた冷たい人形は、人形が流す筈もない涙を流しながら、すがり付く。
愛した者がモノになろうとも、
、“マキナ・クナギリ”の全てを、愛して─愛させて─下さい。
END
**後書き**
果てしなく意味わからんが、カトルさんがマキナんを口説きにかかってます。
視点が替わりまくって誰の言葉か分かんなくなった。と言うより何故こうなった。
たぶん七章直前位の時間枠。