零式小説
□キングサイズのベッド
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※カトルさんは首都近郊にある実家(実家そのものは首都郊外にある)の別邸(それなりに大きいが使用人無し)で暮らしてる設定。其処にマキナとアリアも住んでる設定。
部下の懇願によりカトルは久しぶりに自宅に帰ることが出来き、久しぶりに自室のベッドで眠ることが出来る。普段は執務室に置いてあるソファで仮眠をとる程度で、抜けきらぬ疲労を抜くことが出来るために疲れている筈の身体だが心なしか家路に着くのが少し早い。
「今帰った。」
「おぅ准将お帰り!」
「お帰り。」
家に入り明かりが点き賑やかな声(一人分の笑い声)が響くリビングダイニングに入ると、現在保護と言う名目で住まわせている朱雀の従卒の少女自称下僕のアリア・ルリカラがクァールと遊んでおり、この国の新たなルシにして朱の候補生であるマキナ・クナギリはキッチンで料理を作っていた。
二人は一応カトルの監視下でカトルの元に居るが、マキナはともかくアリアに軍の執務室に入り浸られるのはあまり善くないとして、現在はカトルの自宅でマキナと共に暮らしている。
「今日は早かったんだな。」
「あぁ、部下に早退するよう迫られてな。明日もいつもより遅く出勤してくれと言われた。」
ここのところずっと仕事通しだったので、部下もそんなカトルが心配で更に上の上司と掛け合いそうなったのだが、その辺はカトルは知らない。
「夕食は?」
「未だだ。」
「ならもう直ぐ出来るから今日は三人で食べよう。」
「そうだな!久々だぜ!今日はハンバーグだぞ准将!」
確かに自宅でしかも手料理となると数日振りで、温かなマキナの手料理の夕食に舌鼓を打った。
夕食が済み、先に風呂に入ったカトルは次に入ると豪語したアリアに風呂を譲り、片付けが終わりリビングで番猫のクァールにモフモフしながらソファに座り寛いでいるマキナの横に座り、出てくる少し前にマキナが淹れてくれたコーヒーを飲みながら目を通すだけの書類に目を配せた。
アリアが風呂から上がり最後にマキナが風呂へと向かう。その前にアリアに湯上がりのココアを淹れていくのを忘れずに。カトルはまだ濡れているアリアの髪を丁寧に拭いてやり、アリアはされるがままでクァールにモフモフする。
マキナが風呂から上がり、マキナに紅茶を淹れてやりながら暫く談笑(ほぼアリアの一方的な会話)をしていたら時計は十時を廻っていた。
「そろそろ休むとしよう。」
「あ、もうこんな時間なんだ。じゃあアタシも寝るよ。」
「そうだな。寝ようか。」
そう言ってマキナがリビングにある暖房器具を止め明かりを消し、各々冷たい廊下に出て各自の部屋(カトルは自室、マキナとアリアは各々宛がわれた客室)に向かう筈なのだが‥、
「‥おい、何故着いてくる?」
カトルの後ろにマキナとアリア(そしてクァール)が着いてきてカトルの部屋に入ろうとしているのだ。
二人はカトルの怪訝そうな顔を無視して顔を見合わせてから言った。
「「部屋の暖房が壊れたから。」」
曰くカトルが帰ってくる数日前(その間カトルは執務室に缶詰だった)にマキナはルシの力が間違って発動しそれの負荷で壊れてしまい、アリアはクァールと遊んでいる時物を投げていたら誤ってぶつけてしまい壊してしまったのだ。それから今まで寝るときはカトルの部屋で寝ているらしい。
「‥何故私の部屋なのだ?客室なら他にもあるだろう。」
実家ほどではないがこのカトルの自宅(実家の別邸)もそれなりに大きく客室は全て内装も家具も同じで、二人が使っている客室以外にもう二〜三部屋あるのだが‥、
「ただ寝るだけなら使ってる部屋で寝た方が片付けが楽だから。」
アリアの一言により軽い頭痛と、朱雀は倹約家(もとい面倒臭がり)が多いのかと思った。
「因みに俺達の部屋の暖房はアンタの部下に頼んで修理に出してもらっているが、高性能でいて年代物だからまだ暫く修理がかかるらしい。」
実家がこの別邸を建てた時の暖房器具や家具等に拘り、内装のシンプル且つ機能性重視の設計という余計な事を思い出し、忘れていた筈の疲労が襲ってきた。そしてまさか部下がパシり扱いされていたことに驚いた。
「‥わかった。ならば私はソファで寝よう。アリアはベッドで、マキナはもう一つのソファで「准将もベッドで寝るんだろうが。」‥は?」
冷たい自室に二人を招いてから暖房を入れ、すぐに暖かくなった部屋でどこに寝るかを指示しているところを遮り、一応女のアリアの言葉に柄にもなく声が裏返った。
「こんなだだっ広いベッドにアタシだけ寝るなんざ、流石のアタシでも申し訳ないっての。いつもはマキナと一緒に寝てるけどそれでもまだ余裕あるし、今日は准将も一緒に寝れるな!」
申し訳無さで言ってくれるのは大変ありがたいが、まさかの事実にカトルはクァールを部屋の暖房器具近くに寝かせているマキナを見た。一応ルシだがまさか青少年が少女と同じベッドで寝るのは如何なものかと思う。しかし二人は気にした様子もなくキングサイズのカトルのベッドに潜り込んだ。
「アタシは端の方が良いからマキナは真ん中で良いか?」
「あぁ良いぞ。じゃあアンタは反対側な。」
「おい‥。」
勝手に配置を決めるのは良いがその中に己がいくことは二人の中で決定事項の様だ。
そして二人はカトルを置き去りに既に寝る体制になっていた。マキナの腕の上に枕を敷いてアリアはその上に頭を乗せる。マキナも気にした様子もなく軽くアリアの方を向いて仰向けで寝る体制となった。
「どうした?もう寝るぞ?」
「早く寝ようぜ准将〜。あ、立ってるなら部屋の明かり消してくれよ。」
「‥はぁ、」
中々寝ようとしない(否、思考がついていけない)カトルに二人は疑問符を浮かべるが然して気にしなく、マキナは空いたカトルが寝る部分のベッドをポンポン叩き来るよう促す。
それにカトルは思考に疲れ、溜め息を一つつきベッドサイドのライトのみ残し明かりを消し、仕方無くマキナの隣に入った。ベッドは小柄なアリアと175cmのマキナ、190cmと大柄なカトル三人が乗ってもまだ余るほど大きい。
「はぁ〜、ホントに初めてだな!こうやって三人で寝るのは!」
嬉しそうにアリアは意気揚々とマキナの胸の方によじ登りカトルの方を見る。マキナも特に気にせず重みの無くなった腕を今の内に解している。
「准将が居なくて二人でこのベッドで寝てても全然広くて虚しいだけだったもんな。」
「そうだな。それに今日はいつもより暖かい。」
「‥御託は良いから早く寝ろ。いくら明日の朝遅くても良いからと寝るのが遅くては意味がない。」
二人から背を向けさっさと眠りにつこうとするカトル。そんなカトルに若干口を尖らせながらアリアはゴソゴソと定位置に戻る。
「ちぇ〜、つまんねぇ。まぁいいや。お休み准将、マキナ。」
「おやすみ二人とも。」
「‥」
そして直ぐに二人から寝息が聞こえてくる。余程安心しているのか、起きているという気配は一切無い。
それに少し安堵しカトルは二人を起こさないよう起き上がり、深く布団を被っていないアリアに掛け直してやりながらマキナの少し乱れた髪を直す。穏やかで、戦時中とは思えぬ相応な寝顔に思わず笑みが溢れる。
「ふ、‥良い夢を。」
心地好い睡魔によりカトルもまた穏やかに広いベッドで眠りについた。
END
**後書き**
長男次男末妹のほのぼの。最後強引に纏めてしまった!
カトルは弟妹大事な仕事人間(長兄)マキナは不器用だけど兄妹好きな主夫(次兄)アリアは自由奔放だけど兄弟大好きっ子(末妹)
カトルは黒の長袖シャツに白のズボン、マキナは白のトレーナーとジャージズボン、アリアは赤系統のパジャマ。マキナとアリアのパジャマはカトルの部下をパシリにして買わせてきた設定。
別にタイトルはどうこうでもなかった‥。
起きたらカトルとマキナが向き合っていたら良い。