零式小説

□たまにはこんな日も
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彼の部下から引き取り体温を計ろうとして突っぱねられ、それでも粘ってやっと計ればやはり常人よりも高い体温で。

普段の彼からは想像できない姿は共に住まう者達は見た目より慌てていた。


「マキナ!氷枕は何処にやがりましたっけ?」
「テーブルの上に出してある。‥アリア、この卵粥持っていくぞ?」
「違いますぜマキナ!そりゃルールー(クァールの名前)の餌だぞ!」
「おい、氷が無いからって雪を入れるな。」
「オメェさんだって魔法で水を凍らして氷作ってやがるじゃないですか!」

隣のリビングからけたたましい音と怒号と静かだがとんでもない言葉が聞こえてきて、寝込んでるカトルは風邪を引きながらも別の汗をかいた。



朱雀や蒼龍で言う冬の到来で白虎でも今まで以上の寒波が到来した。
その寒波は非情にも寒さに慣れている白虎国民にも体調不良、所謂風邪をもたらした。

故に国軍の三割もの軍人達が風邪を引くと言う失態を起こしている。因みにその失態に現在トップの元帥も陥っており、マキナの先輩格のルシが不馴れな家事をしながら看病しているとカトルを連れてきたフェイスが教えてくれた。現在国は名前だけの国務を司る者達が甲型ルシの監視下の元、僅かな期間だとしても国を傾けないように必死乞いて馴れない執務をこなしているそうだ。





コンコンッ

ノック音が聞こえ入室を許可すれば少年と少女が些か疲れきった表情で入ってきた。

「粥だ。少しでも食べろ。」
「んでもってそれ食った後は薬だぜ准将。」

鼻孔を擽る匂いに先程聞こえてきたものではない普通の粥だと軽く働かない頭で理解し、粥を乗せた盆を受け取った。

「‥何を見ている。」

あまり食欲が沸かないが体調不良故に必要だと理解しているので食べようと匙を持ち粥を掬って食べようとしたが、二対の視線があまりに気になって口に運ぼうとした手を下ろした。

「ん〜?いや、なんか珍しい気がしてなぁ。」
「‥別に、口に合うかと思って‥。」

心配しつつ面白そうにニマニマした少女と、無表情だが僅かに心配そうな色を含んだルシの言葉に軽く目を細め、気にしない風を装い下げた匙を持ち上げ粥を食べた。

「‥旨いな。」

普段の食事ではない病人食だが、どこか懐かしい、それでいて美味な粥は落ちていた食欲を刺激し些か時間がかかったがそれでも全て平らげてしまえた。
そんなカトルを見て二人は顔を見合わせた後アリアは満面の笑みを、マキナは照れたようにそっぽを向いた。

時間が掛かったが作られた粥を完食したカトルは薬を飲み、疲れを示した体を休めるためにベッドへ潜る。

「俺は寝るからお前達も休むと良い。あと、きちんと手荒い嗽を忘れるな。またお前達も風邪をひいたら大変だからな。」

先日風邪をひいたマキナとそれが移ったアリアにそう促せば、器をもったマキナが頷く。

「流石に何度も風邪ひくわけにはいかないからな。」
「そうだ准将〜。リンゴすり卸したやつ食うか?」
「要らん。早く出ていけ。移っても知らんぞ。」

返すマキナに、自身が所望したものを食べるか聞くアリアをあしらい出ていくよう促すカトルは早く治すために布団をかぶり寝る体制になる。そんな病人に2人は顔を見合わせ、フッ、と、ニヤッッと笑う。

「じゃあ次起きた時用にヨーグルトを用意しておく。」
「それまでおとなしく寝ててくだせぇ〜!」

返答が帰ってくる前に2人は部屋を出る。
カトルは静かになった部屋で些かな物足りなさを感じたが、さっさと治す為に、睡魔に身を任せた。


次に起きた時にヨーグルトを用意され、その中にすり下ろしリンゴが入っているのに気付くが、リビングの方で皮を剥くか皮付にするかで揉める子供の声にはついぞ気付かなかった。





END


**後書き**
風邪ネタ好きすぎて困る。白虎次兄と末妹は長兄が体調不良を起こすとパニクります。

久しぶりの白虎兄弟妹は楽しい。

微妙に『休める場所』話の続編設定です。




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