零式小説
□戯れの舞台
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さぁ、おいで‥
君達に最高の舞台を用意してあげる
最高の‥
サイコウナ‥
チヌラレタブタイヲ‥
────
退治した魔物の数を数えファントマを抜き取り消費した魔力を回復し、しかしそれでも満身創痍に近い状態になる戦闘を繰り返し、頼まれた依頼の半分を消化した。
「はぁ‥、これで大量発生の依頼は終了したな。」
「えぇそうです。残るは幼生の討伐です。」
「幼生か‥。なんか心苦しいな。」
「もう疲れたぁ〜!シンクちゃん帰りたいよぉ〜!!」
一日で終わる筈だった大量の依頼は予想に反して現在三日目。中には途中で討伐数が上がったり、予期せぬ魔物が同時に現れるなどのハプニングが起こってどうにか半分が終わったところだ。
「他はどうなっている?」
「無視?!」
シンクの言葉を聞かなかった事にし、通信を担当していたトレイに問う。
「蒼龍領の方は現在マンドラゴラの討伐を行っているそうです。白虎領の方はスノージャイアントの幼生討伐を、玄武領では未だボムとエレキボム、更にインフェルノの討伐を行っているようです。」
「‥どっちにしろまだまだかかるな。シンクももう少し我慢しろ。」
「え〜!!だったら今日はもう帰ろうよぉ!エースもトレイもレムっちも疲れたでしょ〜?」
「そうね。確かに今日はもう遅いから、確か近くに集落があるからそこで一泊しましょ?」
既に辺りは暗く、近くの集落の明かりも少し遠くに見える。
現在居る場所は魔導院から離れた朱雀と白虎の国境付近。近くにある集落は幸い村と言った規模の大きさで宿にも困らないだろう。
「‥では、今日はもう休みましょう。幸いにも未だ外出期間はありますからね。」
今回の討伐依頼を請け0組は2週間の外出許可を得た。少なくとも1週間で依頼を完了させ、その後2〜3日を依頼の報告書や現在のモンスターの生息報告書をまとめ、残った日数でのんびり過ごす予定にしたのだ。
しかし予定に反して余りにも討伐に時間がかかり、更に休もうと思った町や村でも討伐や採取依頼が舞い込む始末で中々終わらない。
そんなこんなで今に至るのだ。
「そうだな。隊長には宿に着いたら連絡しよう。とにかく休もうか。」
目と鼻の先にある村に向かいエース達は歩き出した。
既に罠に掛かっているとは思わずに。
「ん〜!温泉気持ち良かったねぇ〜!ねぇ〜レムっち?」
「本当だね。まさか宿に温泉が付いていたなんて驚いたわ。」
「温泉というのは地下水がマグマによって温まって湧き出たものです。中に含まれる成分は場所によって異なりますが、多くの場合疲労回復や怪我や持病の治療、女性には嬉しい美肌効果もあります。そして湯治とは「もうトレイ!蘊蓄なんていいよぉ!」‥む。」
蘊蓄の始まったトレイをシンクが止め、その様子をレムとエースは微笑ましそうに見た。
そして暫く雑談や明日の予定を話しあい、別行動中の皆と少し会話した後、夜も更けたので就寝となった。
ドーン!
「なに?!」
「うあぁ!な、何の音?!」
レムとシンクは突然の大きな音で目を覚ました。
「シンク!レム!」
「起きましたか!」
隣の部屋から駆け込んできたエースとトレイ。
「な、何があったの?」
「分からない。だが外れの方から音が聞こえた。」
「行ってみよう!」
「わかったぁ!」
宿屋から出ると音のした方向から人々が走って、否、逃げてきた。
「どうしたんですか?」
「グランドホーンが、群れを成してやってきたんだ!」
「何ですって?!」
グランドホーンは本来縄張り意識の強い魔物だ。それ故自分の縄張りを荒らすものには容赦がないが、その反面他のテリトリーを荒らすことは余り無い。と言うのも他のテリトリーを荒し自分のテリトリーを広げようとしないからだ。(ただし、餌となる生き物が居なくなれば共食いすらするのだが)
しかし実はこの集落は戦争による侵略で滅ぼされた町や村の人々がそのテリトリーを知らない為にグランドホーンのテリトリー上に集落を造ってしまったのだ。
暫くはグランドホーンも大人しく離れたところに住んでいたが、繁殖期をむかえ本来のテリトリーに現れたのだ。
「しかし、どうやら幼生もこの襲撃に来ているのですか。」
「幼生のグランドホーンは常に親と行動して狩りの仕方や戦い方を覚えるって前に読んだ魔物の生態図鑑に書いてあったわ。」
「しかも親を含め6体、仔供の方は5体か。これなら依頼も同時にこなせそうだな。」
「今ならシンクちゃん、頑張れる気がするよ〜!」
うまく立ち回れば討伐依頼もクリアできる。その事もあり四人は直ぐ様現場へと駆けていった。
駆けつけた場所には住人は数えるほどで、しかし人間の大人ほどの大きさのグランドホーンの幼生が辺りを囲んでいた。
「まずは住人達を避難させましょう。レム、避難誘導をお願いします。エースとシンクは集落の外へグランドホーンたちを誘導させてください。私は避難誘導の補助と援護射撃を行います。」
「ああ!」
「わかったわ!」
「了解〜!行っくよ〜!」
トレイの指示に動く三人。
怪我人が居ないのが幸いであり滞りなく避難が完了したレムは援護に向かう。
既に集落から離れその場にはエースとシンク、トレイもグランドホーンが集落に向かわないように威嚇している。
「お待たせ!」
「来たかレム!シンクに回復魔法を頼む!」
「解ったわ!」
多勢に無勢。相手より小回りが利くといっても数が違う。メイス使い故グランドボーンより速くともスピードが遅いシンクは誰より接近戦を仕掛け傷が多い。駆けつけたレムは回復魔法を練りながらシンクへ駆け寄り回復させる。
「ありがとーレムっち!」
「どういたしまして。戦力は?」
「小さいグランドホーンを二匹倒したとこだよ〜。三体目に一発かましたくらいから大きい方が怒っちゃって大変だけどね〜?」
ピンチをピンチと感じさせない間延び声でもやはり緊張が伺える。
エースはシンクを庇うために撹乱しながら攻撃し、トレイも武器柄遠距離で間合いを保ちながら残りのグランドホーンに攻撃し此方に注意を引き付けている。
「取り合えず態勢を建て直しましょ、シンク?」
「うん!レムっちは魔法で援護よろしく〜!」
回復したシンクはレムに援護を頼み再度メイスを構え直し、先程攻撃した仔供のグランドホーンへ駆けていく。
レムは自身を含め全員に防御魔法をかけシンクへは加速魔法をかける。一通りのサポートを終え、向かってくるグランドホーンを鋳なそうと構えた。
『レム!エース!トレイ!シンク!』
「セブン?」
突然の通信にレムの動きが止まる。
『逃げろ!これは罠だ!!』
攻撃を交わすエースも攻撃しているトレイとシンクも動きが乱れる。そこに此方の事情など知らぬ巨大な魔物はシンクをその巨大な足で攻撃した。
「きゃあぁ!!」
「シンク!?」
「うわぁ!!」
「エース!?」
「ぐぁっ!!」
「トレイ!?」
続けざまにエースとトレイもグランドホーンの攻撃を喰らい地面へ叩きつけられる。三人はぐったりと地面に倒れてしまった。
『どうし‥うわぁっ!!』
「セブン?!」
通信の向こう側も激闘のようでセブンの悲鳴の後、プツリと途絶えてしまった。
「一体‥何が?‥はっ?!」
呆然とするレムは自身に影を落とす巨体の存在を思い出した。
暗い真夜中でも判るギラつく魔獣の眼光はレムを見下ろし、回りも一回り小さくも同様の眼光で見据えるグランドホーン達が取り囲んでいる。いつの間にか増援でも来たのか巨大な魔物が増えていた。
「あ‥」
忍び寄る恐怖。どんなに戦場を駆けてもたった1人で活路の見出だせない魔獣達の包囲網に隣り合わせにある死の恐怖が膨れ上がる。
ダガーを構える手も震え、隙を付けるよう紡ぐ詠唱も震えて出てこない。
じりじりと距離を詰めるグランドホーンは鋭い牙を剥き出してレムを睨み付けていた。
ざりっ、と音がしてそちらを振り向く。
「え‥?」
視界に靡く赤いそれは見慣れたマント。薙ぐそれは魔導院で唯一彼が使用する特殊なレイピア。
自分の大切な幼馴染みの後ろ姿。
「マキ‥きゃあっ!」
最後までその名を紡ぐことが出来ず、後ろからの攻撃を受けそのまま堅い地面に激突した。
「‥うっ‥、」
起き上がろうと上半身に力を入れるが痛めた腕ではうまく起き上がれず顔だけそちらをむけば、霞む視界に見慣れた姿が歩み寄る。目の前に跪く彼はいつも心配するときのように頭を撫でる。
「大丈夫か?レム?」
「‥ぁ、マキ‥ナ‥っ」
見上げれば見慣れた筈の幼馴染みの顔。しかしその両目は金色に輝いていた。
ついぞ見ることが出来なくなった彼の笑みはしかし、見たこともない禍々しさを伴っているのに恐怖を感じながらレムは意識を失った。
気絶した少女達を一瞥し立ち上がる。
既に方々も終わっているだろう。そして後始末も終えている。
「さぁ、次の舞台へ移ろうか。」
輝く金眼と浮かぶ紋章。
辺りは血の海となり静寂に包まれていた。
END
**後書き**
内容がぐちゃぐちゃ。説明分かんなくなった。
これ、収拾つかなくなってきた‥。
魔物の生態は捏造です。知りません。集落も捏造。でも実際ありそうで怖いな。
続きが手につかないので一応ここで打ちきり。
もし続きを書こうとしたら0組は悲惨なことになるでしょうな。R-18&R-18G的な意味で。