零式小説

□白と朱の操り人形
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だーれも気付かない
誰が操っているかなんて気付きもしない

気付いている筈の奴も何も言わない
なら遊んでも良いでしょ?

さぁ皆-人形達-
何して遊ぼうか?


──────



あれから戦争も休戦の方向へ向かい、現在候補生達は戦時下になる前の穏やかな、しかし忙しい日々を送ることになった。


「グランドホーンの幼生の駆除?」

エントランスの大魔方陣からチョコボ牧場へ向かおうとしたエースに他の組の候補生が依頼を申し込んできた。

「そうなの。この前解放したメロエの町の近くにグランドホーンが繁殖してしまってね。グランドホーン自体は強すぎて倒せないけどまだ仔供のグランドホーンなら大丈夫でしょ?だから討伐してきて欲しいの。そうね、どのくらいかは解らないけど大体五匹倒してきて欲しいの。報酬はラストエリクサーとフェニックスの羽五個ずつで良いかしら?あと、もし親のグランドホーンに見つかったら大変だからテレポストーンを渡しておくわね。」

矢継ぎ早に喋られ圧倒されたエースだが、最近闘技場内でしか戦闘訓練が出来ていなかったし報酬も魅力的であるため暫しの思案の後頷いた。

「わかった。引き受けよう。」
「そう!良かった。御願いね。」

テレポストーンを受け取りその候補生と別れ向かおうとしていた大魔方陣から反転、教室へと向かった。



「あ、エース!」
「レム。」

教室にはレムがいた。マキナは居らず、机に向かいアイテムの整理をしていた。レムは入ってきたエースに気付き入り口へ顔を向けた。

「何かあったの?」
「討伐依頼を受けたんだ。今から皆に知らせようかと思ってたんだ。」

先程の出来事をレムに伝える。

「え?エースも?」
「‥“も”?」
「私もさっき受けたの。私はインフェルノの討伐なのだけど、エースも討伐依頼を受けたんだね。」

トゴレスや朱と白の国境境だったビッグブリッジ、玄武も消滅し地形が変わってしまった為魔物の生態系が狂い始めてきたらしい。
だから力のある候補生達に魔物の討伐依頼が出ているのだ。

そこへまた扉が開かれ新たに二人入ってきた。

「やぁエース、レム。」
「キング、セブン。」
「お前達も討伐依頼を受けたのか。」
「二人も?」

どうやら二人も依頼を受けたらしい。

「私はアスモデウスの討伐だ。」
「俺はモルボルの幼生の討伐だ。インスマ海岸近くに繁殖したらしく成長する前に倒してくれと依頼された。」

やはり随所に魔物が現れ町の住民達も困っているようだ。仔供の魔物を倒すのは心苦しいがモルボルやグランドホーン等そう簡単に倒せない魔物を減らすには幼生を倒さなければ被害が拡大してしまうのだ。

「何だよ、お前等もか?」

そこにまたしても声をかけられ四人は扉の方を見ると残りの皆が入ってきた。
先頭のナインがかけた台詞に四人も驚いた。

「皆もなの?!」

レムとエースは目を丸くして驚く。セブンやキングでさえ顔を見合わせて驚いた。

「僕は〜エレキボムの討伐だよ〜。大繁殖しちゃったらしくって〜、五十匹倒して欲しいんだって〜。」

ボムやインフェルノ等のボム系統の魔物やプリンなどアメーバ系の魔物はその土地の磁場や気候により増減殖する。やはり白の大量殺戮兵器によってそれらも崩れてしまったのだろう。

「俺はアーリマンの討伐だぜコラァ。」
「シンクちゃんは〜バーティゴの討伐〜!」
「私はペルクーナスの討伐です。」
「オレはスノージャイアントを二体だ。」
「私はライローキ州の森林にいるマルドゥークの幼生の討伐です。」
「アタシはアダマンタイタイの幼生の討伐よ。」
「わ、私もアンクヘッグを五十体討伐して欲しいと‥。」
「あたしはマンドラゴラを五十体討伐だ。」

今現在、朱雀は地図の色を塗り替えているため本来蒼の領土であったライローキや白虎の領土の狂った生態系を正すことにもなった。候補生など力ある者ならば兎も角一般人では弱小な魔物すら驚異であるため駆逐する勢いで狩らなくてはならないようだ。
本来ならば各国の軍や兵士達が魔物の討伐を請け負う筈なのだが、度重なる戦争で国力が安定せず現在の勢力差から朱雀がそれを一手に行わなければならないのだ。

「な、なんか皆一斉に討伐依頼を受けたのね。」
「報酬もエリクサーやフェニックスの羽とか高価なアイテムだからな。」
「他の候補生と違い私達は最前線に出ていきますからいくらあっても足らないくらいですからね。」

此処までに至る戦争や演習で今まで0組で保管していた高価なアイテムは殆ど使用してしまい、どうすれば良いかとあぐねいていたところだった。
因みに今までは0組担当の従卒の少女が管理していたが、先の皇国脱出の際に敵の銃弾に倒れその場に置き去りにしてしまってからは、代わりの従卒が他の組と同時に仕事をすることになったためにアイテム管理は0組がすることになったのだ。

「大量発生の討伐もありますから皆で確実に消化していきましょう。」
「そうだね。皆でやれば早く終わるよ!」
「では明日何組かに分かれ確固撃破しましょう。」

話は纏まり、一同は明日の準備を終えてから各々部屋に戻っていった。

しかし、そこに鋼色の青年の姿はなかった。












密かに繋がれていたCOMMから伝わる会話は全て聞いていた。気付かれないように通信を切りほくそ笑んだ。

「全員何等かのモンスター討伐を承けたようだ。」

仮面を被ったマントのルシはCOMMから流れてきた内容を側に控えている者達に告げた。

「そうですか。ならば此方も準備を進めなければなりません。」
「クク、ま〜たアレで遊べんのか。楽しみだぜ。」
「程々にしておくのだ。お前は以前壊しかけたのだからな。」
「大丈夫ですわ。実際壊すのは壊れた人形なのですから。」
「これでまたアレのデータが取れるんなら構わないけどな。」
「‥朱の魔神が操り人形か。」
「其れの報告によれば朱の魔神は元々傀儡のようなものだ。ならば傀儡は同じ傀儡でも価値ある傀儡に操られる方が余程使い道がある。」

モニターの光だけが光源のその部屋で、数人の男女が集まり傀儡の末路を描いた。



朱の人形達は操られているなど思いもしない。
白い糸が絡まり操られているなどと。

朱の糸を断ち切り白の糸に絡め取られ操られる人形によって操られる何も知らないマリオネットは、その糸の先に待つ遊びを未だ知らない。



END


**後書き**
暗躍の回。
白虎が裏で手を回してる!‥のか?

猟奇の一話完結ものからなんか続いてしまってる。何故だ。
終わらせたいが、終わらないのは何故だ!
たぶんまだまだ続く。




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