竜探求物語

□心の拠り所
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我が家勇者:レヴィン


泣きまくりなメンタルバグり勇者レヴィン君と察しが良すぎるイケメン兄貴カミュさん

何番煎じのデルカダール後イシの村です。

碧夜は好きな子(受)ほど泣かせたいタイプです。

中途半端注意←

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その景色といったら、本来ならば賑やかで、村人達が仕事終わりを労い、子供達は遊び足らぬと駆け回り、そこかしこの家には柔らかな光が灯り、夕食の準備の匂いがしてくるだろうそれを、黄昏に染まる空に似つかわしくない灰色を感じた。

呆然と立ち尽くす相棒を促すが、仕方ない。今日はここで一泊する他無い。

幸いなのか、彼の家の彼のベッドは残っていて、自分は床でいいと言う相棒を無理矢理、そのベッドへ眠らせた。

「ねぇ、カミュ‥。」
「ん?」
「お願い、そばにいて‥。」
「‥ああ。」

こんな光景で人恋しいのだろう。成人の儀式をしたそうだが、まだまだ子供なのだ。




夜も更け、穏やかな寝息が聞こえてきたので、音をたてずに家に出た。


燻る臭いは薄まったが、それでも臭う破壊の跡。臭いがなければ廃墟にすら思うこれが、勇者を育てた村の代償か。

「だが‥、妙だな。」

建物が壊れた臭いはすれど、人の臭いがしない。破壊の痕跡があるのに、殺戮の臭いは無い。
立ち寄った時間にざっと見た景色と夜目を効かせてじっくり見る村は、逃げ惑ったような跡はあれど、何処にもそれらしい、血痕がない。

「逃げたか、或いは‥、」

恐らく捕まっているか。

村と言うより集落に近い規模であるこの村の広さに、壊されているが残った跡を見るにデルカダール下層程の人口だろうか。
其ならばかつて調べたデルカダールの上階の牢屋に収容出来る筈。

そういった意味では、まだ安心できる。だが、その後の対応はどうか。英雄グレイグの部下であるならばそういった事の心配はなさそうだが、それ以外の、あまり宜しくない兵士達もいる筈だ。あの最下層の門兵のような、ゲスな兵士達だったら‥。

「‥まぁ、今は無事を祈る方が良いな。」

それ以上の懸念は、明らかに彼との旅に差し支える。
ならば、至った考え以上は留めておこう。その方が、これからの旅にとっての足枷にならないだろう。


「‥カミュ!」
「っ、レヴィン?」

村の中央の樹を見上げて村人の安否と今後のことを考えていると、後ろから声をかけられ振り向いた。

ドンっ!
「おっ‥と?どうしたんだ?」
「カミュカミュカミュっ‥!」

ぶつかる勢いで抱きついてきたレヴィンに驚いたが、倒れることなく受け止めた。
胸にすがるように抱きつくレヴィンは、しかし取り乱したようにひたすらカミュの名前を連呼する。

困惑するカミュは、しかししたいようにさせておく。
まるで怖い夢を見たときのような‥、・・みたいだと思った。

「どうした?何かあったか?」

殊更優しく話しかければ、グスグスと泣きながらも首を横に振る。

「どうしたんだよ。怖い夢でも見たのか?」

そう言うと、今度は素直に頷いた。
落ち着かせるために、カミュは抱きついたままのレヴィンと共に、樹に背を預けて座った。
そして落ち着いたのか、しかしなおもカミュに抱きつきながらレヴィンはポツリポツリと話した。

「母さんが、エマが‥、村の皆が‥、消えていくんだ。」
「・・・」

カミュはただ黙ってそれを聞いていた。

「僕は動けなくて、馬に乗った人たちに追いかけられて消えていく皆に、皆を助けられなくて、回りから、『悪魔の子のせいだ』って声が聞こえて、怖くて‥。」

ちらほら聞こえてくる噂が、勇者ではないと言うだけに留まらず悪意あるものとされて、純粋な心が傷付いているのが、ここに来ての仕打ちに悲鳴をあげたのだろう。

「怖くて起きたら、カミュが居なくて‥、カミュも居なくなっちゃったって思って、‥怖くて‥。」

だからあんなに取り乱していたのか。
この泣いている大人になりきれない少年は、心許せる相手が自分しか居ないのだ。

「ごめんな?黙って居なくなって。心配するな。俺は、お前を置いて居なくならないぜ。」

な?と顔を覗き込むと、涙をボロボロと溢して泣く、勇者ではない、レヴィンと言う一人の少年が居た。

「‥お願い‥、カミュは、居なくならないで‥。ひとりは、‥やだよ。」

そして泣き疲れたのか、睡魔が再び襲ったのか、レヴィンは気絶するように眠りについた。

「‥、」

寄りかかるレヴィンを抱き締め、カミュは少しだけ、胸に痛みを感じた。

だが、彼の唯一の味方であるのは自分しかいないのだと思い直す。
拠り所を失った勇者の、心の拠り所になろうと。

「ああ。俺は、お前を1人にしないぜ。レヴィン。」


END


**後書き**
突貫!最後は突貫!変な終わりでも気にしないで!文才無いの!

普通メンタルバグるよ。あることないこと悪魔の子のせいにされちゃあさ。

この勇者だとダーハネールでもバグると思う。その場で軍師を殺しにかかるくらいには。あ、ヤンデル‥。

カミュは経験上やゲーム上に無い村とかの末路とか知ってると思ってる。ほかにも捕虜の扱いとか色々。
デルカダール下層の門兵には犬を毎回けしかけます。



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