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□瞳の中に僕がいる
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「音弥、俺のこと好き?」
「…あ、ああ。好きだよ」
ふい。

まただ、また。

「……」
最近音弥は、俺が話しかけると目をそらす。
目だけだったり顔ごとだったり、更には身体を反転させたり。
俺がパソコンを見ながら話してる時は痛い程視線を感じるのに…いったい何なんだ。
挙動不審もいいとこだ。
「藤丸、そういえば遥ちゃんは?」
薄笑いを浮かべながらも頑なに俺を見ようとしないでそんな事を言ってのける音弥は、俺がわざとふくれっ面してる事に気付きやしない。
「…知らない」
「は?」
「知らない!」
洗っている途中だった皿を音弥に押しつけ、音を立てながらキッチンを後にした。
後ろからガラスの触れ合う音がカチャカチャと大きく聞こえたが、知るもんか、と足早に自室へ向かう。
途中、いつもより長時間の外出に疲れきって早くに眠ってしまった遥の様子を軽く見るのは忘れずに。
「おい、藤丸」
自室へ入ってそう時間も経たないうちに、音弥が扉の外から声をかけてきた。
「入ってくんなよ!」
精一杯の拒絶。本当は、以前のように目を見て話をしてくれない理由を聞き出して、抱き締めてほしいのに。
扉の外で音弥が溜め息を吐く音が聞こえる。藤丸は我慢出来なくなり、ゆっくりと扉を開けた。
そして、まさか藤丸の方から開けるとは思っていなかった音弥が驚いているうちに、彼を自室に引きずり込んで腕の中に飛び込んだ。
「藤、丸…」
いつものように、音弥が抱き締めてくれる。いつものように。なのに、何で…。
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