Regret
□03
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□第3話(金造)
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・・・キュッキュッとシャワーの蛇口を閉め、浴室内の鏡に背を向けて張り付いた髪をよけて・・・見る。
『・・・っ・・・』
無数にも見える小さな傷痕とその傷痕の他に目を引く大きな――左肩から腰まで右斜めにはしる生々しい裂傷痕・・・
もう、完全に傷は塞がり治っておる筈やのに今でもまだ熱をもっておるかのように疼き、痛む・・・気がした。
見ているもの何だか辛くて私はフッと目をその傷痕からそらし、浴室を足早に出る事にした・・・
――――
「――あっ、梗姉ーっ!」
シャワーを浴びに行く前に部屋から持って来ておった新しい服に着替えた私は濡れた髪をタオルで乾かしながら、いつも皆で食事を摂っておる居間へと向かっておった・・・その途中で名前を呼ばれ振り返る・・・金造やった。
「――おはよーさんっ!梗姉っ!!」
『――っとと!おはよ金造。珍しな、自分で起きたん?』
これでもかー!って勢いで正面から抱き着かれて私は数歩後ろへ後退りながら抱き着いてきた金造を受け止める。
その瞬間にバサリとタオルが床に落ちた。
「まさかっ!お母に起こされたんや」
『・・・あぁ、それで。』
私の3人の弟を寝起きの悪さに順位を付けるなら3位柔造、2位廉ちゃん、そして・・・1位金造と言ったところで。
1番寝起きの悪いこの子がこうして起きておるのはちょっと奇跡に近い。
・・・流石お母。参りました・・・
「俺、梗姉に起こしてもらいたかったのに・・・梗姉起こしにこぉへんのやもん・・・。」
ブーッと頬を膨らませてすねる金造・・・。
皆にあほの子、あほの子言われておる金造やけど私は金造のこう言う・・・何て言うんやろ?子供っぽいけど素直なところがすごい好き。
『ごめん、ごめん。お姉ちゃん、ちょっと他に用があったんや。明日はちゃんと起こしたるから堪忍してやって。なっ?』
「・・・ほんまに起こしてくれる?約束してくれる?」
『勿論。お姉ちゃん、約束破った事あるか?』
「無いな。」
『そやろ?安心しぃ、ちゃんと起こしたるから。』
私は首元に顔を埋めて抱き着いておる金造の後ろ頭に手をあて、柔らかな髪を梳くようにその頭を撫でた。
コクリと金造が頷く。
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