Toujours
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□第01話
―――――――
――・・・16年前。
――・・・当時、まだ修行僧だったお父はんの所へ寂しさからか逢いに行くんだと私はごねてお母はんを困らせてた・・・――
『――いややっおとうはんのところにいくんやっ!!』
――普段ほとんどと言っていいほど駄々をこねなかったらしい私がこの時は火がついたように泣きながらごねていたんだとお母はんからよほど珍しかったのか何度も聞かされて・・・――
「・・・ほんにどうしたんやろかこの子は・・・。仕方ない・・・八百造さん、お願いしてもええやろか?」
『・・・っ!おかあはんっ!』
――ちょうど、用事があってここへ来ていた八百造にお母はんがお願いする
さっきまで泣いていたのが嘘みたいに満面の笑顔で抱き着いた私
その私をお母はんは「仕方のない子やね・・・」と言いながら抱き締め返してくれて――
「勿論ええですよ。――柔造、お前も一緒に来るんや」
「分かった」
――思いがけず柔造も一緒に行く事になり、大好きな6つ年上の彼の手を引いて明王陀羅尼宗・・・通称・明陀宗の総本山・不動峯寺へ向かった・・・――
『じゅうぞうのてぇはぬくいなぁ』
――季節が12月だった事もあって防寒はしていても寒さが全て防ぎきれる訳も無く、手は赤くかじかんでいて・・・それに気付いた柔造が自身の手で私の手をさすって暖めてくれた――
「俺からしたらお嬢の手ぇも十分ぬくいですよ」
『そーなん?』
――そう、私が聞き返せば柔造は微笑みながら「そーですよ」と返してくれた。
・・・これから、今でも忘れられない事が起こるなんて全く知らないまま私は繋いだ手の温もりを感じながらお父はんの所へ向かった・・・――
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