創作小説

□*一章*
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 長い間、暗かったこの世界に光が差し込んできた。とても明るく、とても懐かしい眩い程の光だった。
 と、同時に魂を引っ張られる様な不思議な感覚に襲われた。いまだかつて感じた事のない奇妙な感覚だ。まるで何かを吐き出す様に。私は引っ張る力の成すまま差し込む光へと吸い寄せられていった。
 そこで、ある考えが突然浮かんだ。解放。封印が解かれたのか?
 そんな淡い期待を余所に、魂はどんどん光へと吸い込まれていく。
 そして、世界が変わった。

 今まで何もなかった、ただ暗いだけだった世界が開けた。と、同時にある衝動に駆られた。
 眩しい。
 眼をつんざく様な光が視界を遮る。思わずマントで顔を隠したがそこで異変に気付いた。
 マント?
 ある筈のない物に、自分でも驚いてしまう。
 抵抗はあったが、恐る恐る眼を開いた。微かな光だけではあったものの久しく浴びる事のなかった光に慣れるのに苦労した。
 そこでようやく自分の封印が解けている、という事実を理解出来た。手が足が体があるという実感。
 封印とはそういったもので、人間が高等な悪魔の動きを封じ込める為の術式の類である。封印にも種類があり、高度なモノ程解けるのに永い年月が掛か自力に破ることが出来てしまうからだ。
 だが封印で共通していること、実体が無いのだ。封印されれば、大抵の場合実体はなくなる。ただそれは失われるのではなく、一時的に魂に戻るといった具合だ。
 しかしどうやら、自分のは、かなり高度なモノだったようだ。お陰で随分と永い間身動きが取れなかった。まあ、当然といえば当然だろう。
 

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