Fate (SN/HA)

□祭リク25・39・40
1ページ/1ページ


「ふはははは! 温い、温いぞ雑種共!」
「くっそ、なんで俺が……」
「……」
「まぁまぁ二人とも落ちつい……」
「はっ、あ・が・り・だ!」
 勢いよくコントローラーを投げながらギルガメッシュが踏ん反りかえる。壊れたらどうしてくれるのだと思ったが、元を正せばゲーム機は貰い物で原価がタダなのだから、別に壊れてもいいかと目を瞑る。どうせ壊れたら壊れたで、修理の悪魔に取り憑かれている弟分が気合いで修復するに決まっているし。
「つーかテメェインチキしてんだろ!」
「なんだと」
 カラフルな画面で嬉しさを全面に押しだしガッツポーズを決めているキャラクターと、負け犬とばかりにがっくり膝を折る他のキャラクター達。ああ、斯くも人生ゲームとは怖ろしきものよ。
「どーやったらあんだけイイ目ばっか出ンだよ! インチキ以外のナニモンでもねぇだろ!!」
「言わせておけば雑兵の分際で……」
「はいはい、ストップ。お茶の用意が出来たからまずはそっちからどうぞ」
 ギルガメッシュの背後に立ち上った陽炎を視認し、慌ててお盆の上から出来たてのたい焼きと緑茶を差し出す。やはり秋といえばたい焼き。誰がなんと言おうとも寒い時期にはたい焼きである。
「彩香、馬鹿げた事に私まで巻き込まないでほしいのだが」
 恨みがましい視線を向けてくるアーチャーさんに湯飲みを手渡しながら、「しょうがないじゃない」と苦笑を一つ。誰が言い出したか急にゲームをやりたいという話になり、たまたま衛宮家に居る存在を集めた結果、ドキ☆サーヴァントだらけのゲーム大会が開催されてしまったのだ。
「ゲームは人数居た方が楽しいしね」
「だが、この状況は如何なものかと思うぞ」
「あー……うん。まぁちょっとむさ苦しいよね」
 炬燵を埋める男性三人。正直ガタイのいい男が一つの卓を囲んでいる様はむさ苦しい。雀荘ならまだしも、なぜ家の中でと思わずにはいられない。
「あーやめだやめ!!」
 コントローラーを放り出し、ランサーさんが仰向けに寝転がる。まぁやったゲームでことごとくギルガメッシュが一人勝ちしているのだから、面白くないのも当然だろう。しかし、流石というかなんというか。十年も現界していると俗世の遊びも上手くなるのだろうか。
「まぁまぁ、運が絡まないゲームにすればいいんじゃないの? えーっと……これとかどう? 最近流行ってるらしいよ」
「あー?」
 積み重なったゲームの中から一本を取りだしランサーさんの前に持って行く。
「狩りのゲームか」
「そうそう。皆で協力するタイプで一つの獲物を狩ったりするんだって。んで素材とか集めて見た目が面白かったり可愛い装備品が作れるんだってよ」
「ほう」
「協力、ねぇ」
「えーっとワイヤレスで繋ぐから……今度はこっちのゲーム機ね」
 色違いの携帯ゲーム機を手渡せば 胡散臭そうに目を細めランサーさんはゲーム機を起動させる。なんだかんだいってやる気満々なのがこの英霊の可愛いところだ。
「嬢ちゃんもやるんだろ?」
「まぁ四人でも出来るからね。後の方から援護するよー」
「彩香、こちらへ来い」
「ん」
 僅かに体をずらしたギルガメッシュの隣に腰を下ろし、起動するゲーム画面を見つめる。そんな私に前方から痛い視線が送られていたが、気付かないふりを貫き通すことにした。だって、他の場所に座ったらそれはそれで面倒なことになりそうだったんですもの……。
「ここでクエストってのを受けて、こっちの方に向かえば戦闘が始まるみたいだよ」
「随分と詳しいな彩香」
「この間教えてもらった」
「へぇ……よし、こっちでいいんだな」
 角笛の音と共に画面が切り替わる。綺麗な草原が画面いっぱいに広がり、最近のゲームって凄いなぁと改めて感心した。
「おわっ、結構難しいなこれ」
「邪魔だ」
「てっめ、アーチャー! 俺に当たんだろうがよ!」
「軌道上にいるお前が悪い」
 画面の中でフラフラと動くキャラクター達は見ていると面白い。しかもそれを操作しているのが、泣く子も黙る英霊様達かと思うと余計に面白味が募る。
「彩香よ、下がっておれ」
「あ、うん」
 ランサーさんもアーチャーさんも自分達が普段得意とする武器を装備しているのに、ギルガメッシュは何故か巨大なハンマーだ。動かしづらいのによくもまぁ器用に敵を倒すものだと感心していたら、いきなりダッシュをしはじめ、前方にいる二人のキャラの傍で大きな攻撃を繰り出す。
「あにすんだよ!!」
「ギルガメッシュ、貴様……ッ」
「ふはははは、我の前を塞ぐでない! 邪魔だ! 雑種共!!」
 どっかんどっかんとそれはそれは楽しそうに英雄王様は仲間を吹き飛ばす。
 ああ、成る程。これがやりたいためのハンマー装備だったのね、と気付いた時には見事に二人のヒットポイントバーが赤く染まっていた。
「好きにさせておけば……」
「言わせておけランサー、所詮ゲームだ」
「フッ、そのゲーム如きで我に勝てぬのはどこの誰だかな」
 ギルガメッシュの言葉にバチリ、と静電気紛いの音がする。いっそこの飛び散る電気で発電とか出来ちゃったりしないだろうか。
「あ、ほらほらランサーさん。敵倒れてるから生皮剥がないと」
「……生皮とか言うなって嬢ちゃん……」
「細かいことは気にしないの」
 消耗品のアイテムはこまめに補給しなくては。ザクザクと敵からアイテムを奪う私の隣で、ギルガメシュがニヤリと顔を歪める。
「イイモノでも出た?」
 雑魚から出るのは良くても毛皮とかだと思ったが……。気になりギルガメッシュのゲーム機を覗き込めば、そこに映るのは私とは違うアイテム名。
「あれ、それってすごい確率低いやつじゃなかったっけ?」
「あぁ?」
「普通は角とか皮だと思ったんだけどなぁ……」
「フっ、我にかかればこのようなもの造作もない」
「ねね、ギルガメッシュ。ちょっとそのゲーム機貸して?」
「よかろう」
 借り受けたゲーム機をランサーさん達の方へ持って行き、気になっていたことを確かめるべく三人で一つの画面を覗き込む。
「操作関連は同じっぽいけど……やっぱり気になるのは取得物よね」
「おう」
 試しにギルガメッシュのキャラを操作し敵を倒してアイテムを入手してみたが、表示されるのは今まで入手していたものと同じもの。では、先程がたまたまだったのだろうかとアイテム欄を開き、思わず目を疑った。
「なんでテメェだけレアばっか出てんだよ!!!」
 同じ敵を倒し同じ敵からアイテムを入手しているのに、ギルガメッシュの操作していたキャラクターが所持しているのはほとんどがレアアイテム。
「ふはははは、羨むが良いぞ!」
「……付き合いきれん」
「ここまでくるといっそお見事というしか」
 ゲームの腕云々よりも、生まれ持ったなんとやら。既製品の娯楽にまで適応されるとは、幸運A恐るべし……である。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ