GS2 long
□vol.1 悪夢の7月19日 前編
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(Photo by Natuyumeiro)
あれは、3ヶ月前の春。
羽ヶ崎学園高等部、通称「はね学」の入学式の日。
外部入学で知り合いのいないわたしは、心細い思いではね学の校門をくぐろうとしていた。
校門付近には、数名の女の子が浮き足立って集まっている。
その雰囲気に、わたしは何気なく立ち止まってしまった。
すると…。
「あっ、来たっ!」
誰かが小さな歓声をあげたのをキッカケに、その場の女の子たちの視線が一気に1人の人物に集中する。
どうやら彼女達のお目当てが来たみたい。
「佐伯く〜ん、おはよー!」
「佐伯君、一緒に行こうよー」
あっという間に女の子たちに囲まれた男の子は、彼女達一人一人に笑顔を返している。
「おはよう。みんな早いんだね」
わたしはその光景に目を奪われて、思わずメガネを上げて目を細めて見た。
彼の色素の薄い髪が光に透けて、とてもキレイ…。
わたしの視線を感じたのか、彼は笑顔のまま、ふいにこちらへ顔を向ける。
一瞬、彼の片頬が引きつったように見えたけど、多分この見えにくいメガネのせいだとわたしは思った。
――うわ、見とれちゃってた。変なやつって思われたかな
慌ててわたしは視線を逸らし、胸のドキドキを抑えながらすぐにその場を離れたんだ。
そのあと、入学式の体育館でも、わたしは新入生代表の挨拶をしている氷上くんのスピーチなんか上の空で、校門で出会った彼のことばかり考えていた。
すっごくカッコよかった…。
女の子たちが騒いでたのも頷けるよ。中等部から有名だったんだろうか。
来年は彼と同じクラスになれたらいいな。
なんだか、わたしの高校生活いいことありそう!と、期待に心が躍った。
それが、わたしと佐伯瑛くんとの出会い。
…一目惚れだったんだ。