GS2 long
□イタズラな2nd Kiss 〜プロローグ〜
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人の噂も75日…だったかな。月に換算するとおよそ2ヵ月半。
うう、結構長いんだ…。
身近でヒソヒソ話をされると否でも気になる。しかも、それが自分のことだったら嫌な気分。
今、教室へと向かう廊下を歩きながら感じる痛い視線。
コソコソと囁かれる会話は、すべて、明らかにわたしに向けられているものだ。
『うっそー』
『E組の海野さん…』
『今朝、佐伯くんに告ったらしいよ』
『…おもいっきりフラれてたって』
『えー!佐伯くんに―』
ヒソヒソ…
恥ずかしくて居たたまれない気持ちになり、思わずトイレに逃げ込んだわたしは、じわっと溢れてくる涙をぐっとこらえた。
そして、「今朝のこと」が凄まじい速さで学校内に広まっている事実に絶望的な気分になってしまう。
――もう、ほっといてよぉー!
みんな、ひどいよ。心の傷をえぐるようなことを。それに、どうして噂が広まるのってこんなに速いんだろう。
瞬く間に広がった噂の恐ろしさを身をもって知ったわたしは、篭っているトイレの壁にもたれて、ぼんやりと考える。
ただの噂話でこんなに速く広がるワケがない。
やっぱり。
彼に係わることだからかな。
…そう、あの佐伯瑛くんが。
――はぁ、なんでこんなことになっちゃったんだろう…
わたしは特大のタメ息をついて、あと75日間は話のネタにされてしまうという「今朝のこと」を思い出す。
だいたい、わたしは佐伯くんに誕生日プレゼントを渡したかっただけなんだ。
…そりゃあ、あわよくば自分の気持ちを告(い)えたらいいなって思ってたけど。
成績優秀、スポーツ万能、いつも女の子達に囲まれてる、爽やかな笑顔でかっこいい、はね学のプリンス。
それが、佐伯くん。
その佐伯くんに、あんな不機嫌な顔して睨まれるなんて思いもしなかった。
それに、彼から言われたこともよくわからなかった。なんでいきなり怒られたんだろう、わたし。
わたしからプレゼントを渡されるのが、よっぽど嫌だったのかな…。
わたし、海野あかりはもう二度とヒソヒソ話はしません。
だから神様、おねがい!
時間を戻して!
今朝、誕生日プレゼントを佐伯くんに渡そうとしてたわたしを全力で止めたいよ。
<1>につづく