GS2 long

□vol.9 デートをねらえ!
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放課後、下駄箱で靴を履き替えている時だった。

「オッス、あかり!オマエも帰るとこか?」

振り返ると、片手を上げてハリーがこちらに歩いてくる。

「オッス、ハリー」

わたしも手を挙げて答えると、ハリーは屈託のない笑みを浮かべた。


「今日はバイトあっから、途中まで一緒に帰ろうぜ」
「うん、いいよ」

そういえばハリーと一緒に帰るのって久しぶりかも。
ハリーと並んで歩き始める。

分かれ道になる交差点までの道を、ハリーと他愛も無い雑談をしながら歩いた。

昨日見たテレビの話とか、お気に入りのバンドの話とか。
主に話してたのはハリーだったけど。


「んじゃ、あかり、またな!」
「ハリー、また明日ね!」

バイバイと手を振って踵を返したら、後ろから「あかり?」と呼び止められた。

「オマエん家、そっちじゃねぇだろ?どっか行くのか?」
「うん。ちょっと公園通りまで」
「へぇ。買い物か?」
「今度の日曜に遊園地に行くんだ。そのとき来ていく服をね」
「はーん。……デートか?」

思わず笑みがこぼれたわたしを見ながら、ハリーはニヤリと笑った。


「えっ?な、なんで?」
「わざわざ服買いに行くんだから、女じゃねぇだろ」
「そ、そんなことないよ!女の子とだってオシャレして行くもん」
「へー。時間あんなら一緒に服見に行ってやったのにな。で、誰と行くんだ?」

驚くわたしを面白そうに見て、意地の悪い顔をする。

夏休み前からハリーには心配掛けてたし――。
報告しておこうかな。


「えっと………佐伯くん」
「………は?」


一瞬の沈黙。


ぽかんとした顔でハリーが「マジで?」とわたしを見る。
うん、と頷くと、ハリーの目は真ん丸になった。

「佐伯って、あの佐伯か?」
「う、うん。多分、その佐伯くん」
「…………へぇ、すげーじゃん」
「うん!」


あれから、佐伯くんと放課後や珊瑚礁で顔を合わせる度に誘い続けた結果!
「なんで俺なんだよ」と言われながらも、ついに佐伯くんと一緒に遊園地に行く約束を取りつけたんだ。

――渋々だったけど。


でも。
粘ってみるもんだよね。
 

「……何でいつの間に……」
「?」

ハリーは何かぶつぶつと独り言を呟いている。

どうしたんだろう。
訝しげに首を傾げると、ハリーがハッとして口を開いた。

「……あ、悪ィ!何でもねぇ!オレ、バイトあっから行くわ。じゃあなっ」
「う、うん。バイバイ」

ハリーは一気に早口で言って走り出してしまった。

わたしはぼんやりとその後姿を見送る。


変なハリー。
ホントにどうしちゃったんだろう。

ちょっと心配になったけど、公園通りに向かってわたしはまた歩き出した。



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