12/17の日記

19:53
白景色・保護者
---------------
かぽーん•••

「いやぁ〜雪を見ながら入る温泉って風情だねえ•••」

「•••おい、ちょっと待て猿飛」

「ん〜?」

「何故、お前がここに居る?」

「そんなの決まってるじゃん、旦那のお目付役に」

「それはわかっているが•••いや、そうじゃねえ」

「?」

「•••お前がここに居るということは、真田は政宗様と一緒か?」

「うん、あっちで右目の旦那と同じように入ってるよ」

(政宗様•••やけに俺を温泉に連れ出そうとしてたのは、こういうことだったのですか•••っ)

「•••その様子だと、俺様たちが来るの知らなかったみたいだね」

「ああ•••政宗様の思惑通りだろう」

「ははっ、竜の旦那の口車に引っかかるなんて珍しいね?」

「本当に•••政宗様のご厚意に甘え、日頃の疲れを癒しに来たが•••お前を見たら、色んな意味で癒されそうにもない」

「ええ〜俺様は癒しにならないって?ひどいなぁ、右目の旦那」

「わかった上で言っているな、お前」

「•••?」

「まぁ良い•••で、入らねえのか?」

「俺様?•••うーん、旦那たち見てないといけないから」

「居ても居なくても大丈夫だろう、あの二人は」

「それはそうなんだけど、一応は•••ね」

「過保護だな」

「右目の旦那に言われたくありませーん•••あ、もしかして俺様と一緒に入りたくてそう言ってる?」

「そうだが?」

「だよなぁ、右目の旦那が一緒に入りたいって•••えっ、言うの?」

「言うぞ」

「•••意外」

「俺の方からすれば、お前の方が意外だぞ猿飛」

「なんで?」

「あの政宗様の元に腰布一枚の真田を置いておくのは•••喰ってくれと言っているようなものだぞ?」

「•••しょうがないでしょ、旦那が竜の旦那と居たいって俺様の話を聴かないんだから」

「お前•••何だかんだ言って、真田のためになることは認めるんだな」

「•••なに?その目は?」

「いや•••優しい奴だと思って、な?」

「•••優しくないよ、俺様は」

「ほう、何故だ?」

「俺様は突き放すことしか出来ない、冷たい奴だから」

「•••政宗様から聴いたんだが」

「?」

「以前、真田が政宗様に城を奪われたことがあっただろう?」

「•••残念ながら、そんなこともあったね」

「その時、真田はお前に顔を叩かれてやっと自分の愚かさに気づいたそうだ」

「•••••••••」

「そして、お前には言えなかったことがあるらしい」

「俺様に言えなかったこと•••?」

「未熟な自分のためにお前が身を、心を痛めるのは嫌だそうだ•••だが」

「•••何?」

「お前がそこまでして自分のことを想ってくれるのが、申し訳なくも嬉しかったそうだ」

「•••え、殴ったのに•••?」

「政宗様が真田からそう聴いたそうだ•••お前も真田も、そういうところは変に不器用だな」

「•••旦那を殴ることになった元凶に言われたくないんですけど、って•••俺様も?」

「猿のお伽噺、しっかり憶えているぞ?」

「!」

「くく•••紆余曲折が好きだな、主従揃って?」

「•••それ、どういう意味?」

「甘えたい奴に対して甘えられない、そんなところも俺は可愛いと思うぞ?」

「•••俺様、右目の旦那の可愛い基準がわかりませーん」

「俺もわからん」

(•••きっぱり言われても困るんですけど)

「さて•••話が逸れたが、一緒に入るか?」

「•••良い話が聞けたし、せっかくだからお供させていただきますかねえ」

「フ•••そう来ないとな」

「それじゃ、手早く脱いじゃいますかね!はいはい、っと」

「!!」

シュバッ!!

「お待ちどうさま!お背中流しますよ、なんてね?」

(•••まったく見えなかった•••)

「ん?どうかした?」

「いや、なんでもない•••それより」

「なに?」

「先にお前の背中を流してやろう」

「え、俺様は良いよ!先に浸かってる右目の旦那が冷えちゃ困るし」

「良いから」

「•••じゃあ、お願いしますかねえ」

「ああ、任せろ」

ザザーッ•••

「•••んふふ」

「猿飛•••?」

「右目の旦那、首から上がちょっと赤くなってる」

「温度差だ、仕方ない•••ほら、じっとしてろ」

「は〜い」

「よし•••流すぞ」

「はいよ、っと•••ん」

「熱いか?」

「大丈夫、指先が冷えてるからちょっと反応しちゃっただけ」

「•••そうか」

「そうそう」

(•••しまった、猿飛は気を緩めるとこんな声が出るのを忘れていた•••)

「•••へへっ、竜の右目に背中流してもらうなんて•••こりゃ御利益あるかなぁ」

(これは•••目の保養どころか、すごいことになりそうだな•••)

わしゃわしゃ•••

「んはぁぁぁ•••やっぱ人様に流してもらうと気持ち良いや」

「それは良かった」

「•••教えてくれてありがと、景綱さん」

「ん?•••ああ、どういたしまして」

「お礼に、って言っちゃ何だけど•••ここに居る間は右目の旦那にいっぱいご奉仕しないとね」

「•••••••••」

「あれ?どうかした?」

「いや、何でもない•••ほら、前を見てろ」

「はーい•••?」

(気の迷いが出たら、水被るか•••)



おわり

前へ|次へ

日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ