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□君が右に傾くと
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君が右に傾くと
ボクの左側で、"集中"している男・御剣怜侍。
その横顔は冷たそうであり鋭くも、瞳は熱を纏っている。
「……ム……」
ただ、彼がそんなに夢中になっているのは。
「………」
ポータブルゲームの画面。
「御剣、目悪くなるよ」
「…わかっているが…勝つまではやめられない。」
手帳を分厚くしたくらいの大きさのゲーム機は深い黒で、画面を拭くクリーナーがぶら下がって居る。
御剣が何にそんなに必死になっているかというと。
「……ま、またスタートが……」
(出遅れてばっかだなー…御剣)
カーレースのゲームらしい。
ボクが思うに、御剣は確実にレースゲームや格闘ゲームには向かない。
そうは思うが、頑張っている御剣を見ると…
まぁ良いか、と思う。
気が済むまでやることによって、お前の気が晴れるなら。
それに。
「………ムぅ…今度こそ…」
ゲームの中で、御剣が動かす車がカーブに差し掛かると―
「………〜……よし!」
「……御剣、」
車の動くように、御剣も動く。
カーブなら、体を曲がる方向へ傾けて。
「………右カーブ?」
「あ……///う…いちいち観察するな、成歩堂…」
「いいじゃない…可愛いんだもん」
右に曲がった姿勢で固まる御剣に、ボクはそっと口付けた。
「…そろそろボクと遊んで?」
(君が右に傾くと、ボクは左に傾く)
fin