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□夢の向こう
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夢を見た、とボクが言うと、御剣は本から目をあげて不思議そうな顔をした。


「キミが夢の話とは珍しいな」
「なんか…気になる事満載な夢だったからさ」

何せ御剣が出て来たんだから。


「話してみてくれ」
「本は?いいの?」
「いいんだ、どうせ一度読んだ本だ」




珍しくボクの話に興味津々な御剣。


「それがね、変な夢なんだ」



………





白い部屋に、黒い鳥籠があって。


それにボクが入って居た。



鳥籠の正面にはイスがあって、そこに御剣が居た。




黒い鳥籠の隙間から見える御剣は、ボクを見つめて居た。


何故かぽろぽろと泣きながら。


だからボクは夢の中で、歌を歌おうとした。


御剣が泣いてるのをみたら、居ても立ってもいられない気持ちになって。


けれど、声は出なかった。


ハッとした瞬間、白い部屋にはヒビが入った。

分厚いガラス板に亀裂がはいるように、空間にヒビが。






「なるほどう、」



御剣が泣きながら、手を伸ばしながら呟いた瞬間、部屋は粉々になった。



勿論、ボクも、御剣も。



「……ていう夢。」
「………おかしな夢だ」
「だろ?…でもさ」



鳥籠に入るボク、なんて物を実際に思い浮かべてもリアルじゃない。

しかし涙を流す御剣の姿が、なんだか生身のような距離感だったんだ。


「…御剣は、ほんとはいつも泣いてるのかな、なんて思った」


心の何処か、ボクの目にうつらない場所で。


夢の中のボクは、本当は黒い鳥籠の中では無く外に居て、囚われて居たのは御剣だったんじゃないか。


よくわからないけど、と付け足したら御剣はボクを真っ直ぐに見て、

「…キミには私の事なら何でも見えるのかもしれないな」



と何故か寂しそうに笑った。





fin
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