おかしい。 「留ーっ!!」 おかしい。 「っ…留、何処にいるの…」 目が覚めたら、いつもなら僕より早く起きても、部屋で待っていてくれる留が居なかった。 委員会かな、と思い先生や後輩に尋ねたり、倉庫に行ってみたけれど、何処にも居ない。 「…っ……」 どうしたの、留。 何があったの。 ねえ、返事をして。 お願いだから。 涙が溢れたけれど、気にしてなどいられなかった。 何処にも居ないけれど、何処かに居る筈だから。 演習の時、君が教えてくれた言葉だよ。 まだ、探してない場所がある筈だ。絶対に、ある筈なんだ。 「……演習場…」 学園の、裏々山の手前。みんなで鍛練を重ねた、ただの草原。 「…留っ…」 どうか、無事で居て。 そんな願いは、贅沢ですか。 留は、演習場に居た。 「っ…留…留…」 紅い水溜まりの中に。 「……………っ」 どうしたの、留。 何があったの。 ねえ、返事をして。 お願いだから。 お願いだから、返事を頂戴。 「留っ…」 駆け寄る事しか出来なくて。 そっと君を抱き締めた。 「ぅ…っ…とめ……何で…」 また僕を、独りにするの。 まだ、してない事たくさんあるでしょ?一緒に卒業しようって、言ったじゃないか。 「…とめぇ…っ」 お願い。 目を覚まして。 「伊作」 またこの名を呼んで。 「おーい、伊作?」 ふぇ? 「いーさくさーん」 何これ、留の声がする。 悲し過ぎておかしくなっちゃったのかな……僕が、しっかりしなくちゃいけないのに。 「…………………?」 何か…あれ? 尻の辺りがむずむずする。悲しくて、頭だけじゃなくて体もおかしくなったみたいだ。 留、眠るようなその顔を、 もう一度。 「何泣いてんだよばか」 「……………」 「いーさくー?」 留が… 留が喋った!!!! 「ぎゃあぁああああッ!!?!」 「うぉおぉおおおおッ!!!!」 思わず立ち上がって、そのまま留を落としてしまったけれど。 「いってえぇえええッ!!!!」 僕の目の前で、転がり回っているのは誰? 「伊作てめえ何すんだよ!!!!」 留でした。 「え…生きて…る?」 「はあぁあ?何馬鹿な事言ってんだよ」 へたりと座り込む僕に、留はいつもの声で睨み付けてきた。 「ってさっきどさくさに紛れて僕の尻撫でたでしょ!?」 「そっ…それは不可抗力だっ!!」 本当に、留だ。 「え?じゃあその血は誰の?」 「血?ああこれか。これは何でも"ケチャップ"とやららしい」 ケチャッ…プ? 「しんべヱが持って来たもんでな。それを仙蔵が面白がって…」 「食満!話によると南蛮では、これを血に見立てた殺人劇をやるらしい」 「だ…だから何だよ」 「これで一変死んで来い☆」 「…それからは覚えてねえ。」 「な、な、な、」 仙蔵ー−−−−ッ!!!! 「じゃ、じゃあ怪我とかしてない?本当に生きてるんだね?」 「仙蔵に殴られた所がズキズキするがな。……生きてるよ」 触ってみたら、留の頭には本当にたんこぶが出来ていた。 そのまま留を抱き締める。 もう一度。 今度は喜びを噛み締めて。 「ど、どうしたんだよ伊作?」 君の願いを裏切ってあげるから 「ひざ枕ごちそーさん」 「なっ」 もう心配させないで。 |