「全く…、何処もかしこも穴を掘れば良いというものではないぞ喜八郎」 「そう?」 滝ちゃん。 滝ちゃんは、知らないだけだよ。 「そうだ!お前はむやみやたらに掘り過ぎる!被害者続出だぞ!」 「おやまあ」 むやみやたらに? 私だって考えてるよ。 「まずお前は私の優秀さから学ぶべきであって……」 「…………」 私は知ってるよ。 滝ちゃんの色んな事。 何たって一年生から一緒だからね。部屋もずっと一緒で、毎晩滝ちゃんの色んな話を聞いたもの。 授業で初めて戦輪を習った時の感動とか。上手く使い熟せなくて、こっそり練習してた事とか。 その時出来た傷を皆には隠してたくせに、私に手当てさせてくれて。私、滝ちゃんの特別になれた気がしたよ。 委員会は、まさか滝ちゃんが体育委員会に入るなんて思わなかったな。滝ちゃんと一緒に作法委員会に入りたかったのは、私の独り言。 多分気付いてないだろうけど、滝ちゃん。委員会の話が日に日に増えてるんだよ。 初めは、滝ちゃんがあまりにも楽しそうに話すから、興味深く聞いていたけれど。 私は知ってるよ。 知ってしまったんだ。 滝ちゃん、七松先輩が好きでしょう?委員会の話なんかじゃなかった。全部、七松先輩の話だった。 あまりにも楽しそうに話すから。私が時々、話の途中に零す溜め息、気付いてないでしょう? ねえ、滝ちゃん。 私が滝ちゃんを好きだって、愛してるって言ったらどうする? 困った顔をして、受け入れてくれる? お前は親友なんだ、と茶化してくれる? 私は七松先輩が好きだ、と離れて行ってしまう? 滝ちゃん。 私は知ってるよ。 滝ちゃんが七松先輩を好きになった日。 私が滝ちゃんを好きになった日より、うんと後だったんだよ。 もし私があの時伝えていたら、滝ちゃんの気持ちは今と違っていたかな? 「喜八郎?聞いているのか?」 滝ちゃん。 私は、知っているよ。 滝ちゃんの色んな事。 でも、滝ちゃんは知らなくて良いよ。 知らなくていい、 こんな暗い感情 「あ、ごめん。聞いてなかった」 私は全部、穴に埋めるから。 |