「らいぞ…」 何でもない夕方。部屋には同じ顔が二人。机に向かって宿題とにらめっこしていた僕の首に、吐息と共にするりと巻かれる二本の腕。 「?どうしたの、三郎」 「愛してる。」 何の前触れもなく訪れる囁き。これは、僕しか知らない君の音。その穏やかさにゆらりと浸ってみればまた、耳元でくすぐったいくらい強く。 「愛してるよ、雷蔵。愛してる」 「…うん、僕も愛してるよ、三郎」 その温度を感じるように君の腕に唇を落とせば、今度はうなじに甘さを感じる。そう、これが君の甘え方。僕だけが知っている、君の愛し方。 目の前の紙束をぱたんと閉じれば、巻かれた腕はそのままにくるりと振り返る。自分と同じ顔。だけど全然違う顔。 「…宿題は明日でいいや」 そう僕が呟くと、一瞬目を丸くしてまた見つめ合う。お饅頭にも、南蛮菓子にも負けないくらい甘いそれは、君の愛しさで彩られた接吻。 僕にしか見せないその目。僕にしか落とさないその唇。僕しか抱き締めないその腕。そして部屋中に溢れ出す、それが。 それが何よりのあなたらしさ 僕にしか見せないその優しい笑顔。 |