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耳元で、



「…アーサー」



「…っ……やめ…」



甘く囁くだけで、お前の体は熱くなる。さすがエ口大使、と言いたいところだが、お前のこの体を作り上げたのは他でもない、この俺だ。




「良いじゃない、もう三日目だよ?お兄さん渇き切っちゃったよ」



「ば…っ、んなの知るか、あっ」



お前の後ろはソファ。自分から逃げられない場所に座ったのが悪い。そもそも此処はお前の部屋。そんな勝手を知った場所で、俺が来るのを知っていてそこを選んだなら、こちらだって期待してしまう。

隣に腰掛けて。うなじに唇を落とせば、俺しか知らない熱のこもった声が部屋中を濡らす。



お前の吐息から感じる。


お前は俺の事が好きだ。
自惚れだと言われても構わない。

俺もお前が好き。愛してるから。





「ちょ…っ、何してんだ、よ…!!」



「何って、このままじゃ服汚れるだろ?高かったんじゃない?このジャケット」



既に温まった体を包む布なんて要らない。そんな物、綺麗なお前をぼかすだけだ。



「ひ…ぁあっ」


小さな突起を摘みながら、お前の服に手をかけていく。どれだけ口が嫌と言おうと、その頬の赤が、その声の艶が、もっとと誘っているようにしか聞こえない。



今、俺達の邪魔をするものはない。さあ、夜が明けるまで。




「…っフランシ…ス」



「愛してるよ。アーサ「アーサー!!」




喧しい音と共に開かれたドア。中に入ってきたのはお前の元弟だった。



「なっ、アルフレッド…!!」



「アー…サ…?」




ああ面倒臭い。自室の鍵くらいちゃんと閉めときなよ。それと、勝手に上がり込むわノックもしないわ。どんな教育したんだか。


そんな俺の思考を余所に、二人の表情がみるみる青冷めていくのが判る。アーサーの方はまだ息が荒く、頬をほてらせているけれど。




「あ…アルっ!!これは…っ」



お前はそうやって取り繕おうとするけれど残念、あいつの耳には届いていない。視線を外そうにも外せないまま、こちらを見て何か言いたげなそれは、目の前の現実を受け止められないでいる。


そのままでも俺は構わないけど、久しぶりの行為にアーサーが集中出来なだろうから、先程まで愛を囁いていた口を重苦しく開いた。




「こーゆー訳だから、帰ってもらえるかな?」



「っ…」



俺の声が届いたらしく、アルフレッドは一瞬びくつきつも自分の喉と相談するように少しずつ、声を絞り出してきた。



「…あ…、どうして、君、が」




全く。


アルフレッド。お前のその追求心は、時に自分を傷付ける事を知るべきだ。




「どうしてって、恋人同士がじゃれ合って何がおかしい?」



「や、やめ…っンあ」




やっぱり知られたくないものなのか。口を挟み俺の言葉を否定しようとするアーサーの胸の紅を摘み上げる。アルフレッドの顔色なんて、端から伺うつもりはない。



目の当たりにする元兄、恐らく想い人の乱れる姿。どれ程望んだ光景だったか。自分が、相手ならば。

アルフレッドの感情が手に取るまでもなく、表情に現れる。




「…アーサーから手を離してよ、フランシス」



餓鬼にしては、よくあがいた方だよ。でも、お兄さんはそんな優しくない。もう大きくなってしまった餓鬼をあやしていられる程、暇でもないし優しくないんだ。




「あれ、聞こえなかった?退場だよ、アルフレッド」


「…ッ!!何だい!?俺にはアーサーが嫌がっているようにしか見えないんだけど!?」



「…こういう時だけ餓鬼のふりすんなよ」




自分の都合の良いように解釈してそれを人に押し付けようとするなんて、餓鬼の戯れだ。お前が嫌がってると表現した当のアーサーは、羞恥に耐えきれないのか俺の胸に顔を埋めた。その手は、嫌がる口とは裏腹にしっかりと俺の服を握り。





「…アルフレッド?」





なあ、俺は、





他人にその価値を決められるなんて御免だね



お前がもう子供ではないように。




 

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