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アーサー君が大怪我をしたって
かなり危ないみたい





「…っはあ…はあ…」



駆けても駆けても、教えて貰った病院は見えてこない。もう、着いても良い筈なのに。

自動車でも走らせればもっと速いでしょうに。どうして私は、何も考えずに走り出してしまったのでしょうね。

馬鹿みたいに脚が振るえている。それでも走り続ける私は、とても醜い事でしょう。





けれど、動かずには居られなかった。






「…はあ、は…っはあ…」





まだ、見えない。貴方が苦しんでいるその場所は、まだ。



いつも、


いつもいつも、




「菊君!!こっちだよ!!」




アーサーさんの事を教えて下さったイヴァンさんが手を振っていらっしゃる。ああ、やっと貴方のお傍に。



「−−−−−−−−っ?」





そこは、確かに病院で。いくつか並べられたベッドの上には















誰も、居なかった。

そもそも病院独特の消毒液の匂いもこもらない。何処か風が抜けていくように閑散としたそこは廃墟。ベッドにかかるシーツも、もう何年も使っていないように、薄汚れていた。



「…アーサー…さん?」



「どうしたの?菊君」



その涼しげな表情に、背中を伝う汗と似た温度を感じた。



「イヴァンさん!!アーサーさんはどちらに!?」





ああ、まさか





「……アーサー君?彼なら連合の会議中だけど?」





やっぱり。





「ふふっ、走ってきたの?菊君」




「…何の、おつもりですか」





こちらの心境とは裏腹に、イヴァンさんは耳元で呟く。まるで、愛を囁くように。まるで、もう逃げられないと悟すように。





口実に決まってるでしょう、そんなの





アーサーさん、ごめんなさい。


貴方には、いつも助けて頂いてばかり。





これ以上、ご迷惑はかけられません。




 

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