「アーサー!!自転車乗るの手伝ってくれ!!」 ある昼下がり。やっと取れた休暇、弟の顔を見るのも久しぶり。お手製のスコーンを土産に訪ねてみれば。 「…どうしたんだそれ」 見慣れない色の自転車を押してくるアルフレッド。その顔には早く乗りたいというような表情を浮かべている。 「グリーンは似合わないからって、フランシスがくれたんだ!!」 「そ、そうか」 あの髭野郎。人の弟と勝手につるむなよばか。自転車って、これで餌付けしたつもりか。ってかグリーンって俺んちの軍服じゃねえか。喧嘩売ってんのかばか。 「アーサー?」 屈託のない青い瞳が俺を覗き込む。ああもうどうしたものか。 「よ、よし!!後ろ押さえててやるから乗れ!!」 「うんっ!!」 この手が今、お前の全てを支えている。 楽しさとか嬉しさとか、不安さえ消し去る期待とか。 この手を離してしまったら。 お前は倒れてしまうのか? それとも進んで行ってしまうのか? 「アーサー!!もっと早く!!」 「お、おう!!」 それでもまだ、俺は離せそうにない。 お前の仕草ひとつひとつ、 チェックメイト! 俺を支えている。 |