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今日はお客様がお見えになる予定です。我が国の桜をお見せ出来ないのが惜しいですが、お互い忙しい身。こればかりは仕方のない事でしょう。また来年、お誘い致しましょうか。



「日本!!」



そうこうしている内に、いらっしゃったようです。開けた戸から聞こえるその声を便りに、玄関へ急ぎます。


長年の付き合い、木目が見えるかどうかというその戸をカラカラと開けば、イギリスさんがその綺麗な髪を日の光に輝かせていらっしゃいました。



「お待ちしておりました」



久しぶりの再会に思わず頬が緩みます。さ、どうぞと促せばイギリスさんは玄関の敷居を跨ぎ、私に笑い掛けて下さいました。



「久しぶりだな、日本。…ちゅ」





「……………」







イギリスさんは、私に笑い掛けて下さって、一言。そのすぐ後、私の耳元で。










……………ちゅ?










「じゃあ、邪魔する」



「え、待っ」







な、何なんですかその擬声語は!!


欧米の方が挨拶の代わりに接吻をするのは存じておりました。


けれど!!







ああ!!もう!!





そーゆーモノだって割り切れ!!





そういう…ものなのでしょうか。





平然と部屋へ向かったイギリスさんを、ただ静かに追い掛けました。




 

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