ああ、どうして貴方は私に強要してくるのですか。私は求めていない。貴方も貴方の望むもの全て。求めていないのです。 ああ、どうして君は俺から逃げ回るんだい。俺はただ君と話しがしたい。君と君の愛するもの全て。話しがしたいだけなんだ。 「日本、アメリカ君が来ましたよ」 「お帰り頂くようお願い致します」 今日は折角縁側で桜でも愛でようかと思っていたのに。貴方は何処までも空気が読めない。 「日本、出ていらっしゃい」 「嫌です」 いつもなら私の一声で、小言を言いつつも立ち去る上司が、今日に限って自棄にしつこい。ああ早くしないと桜が散ってしまう。我が美しき彩りよ。 「日本、今日は良い天気ですよ」 「そうですか。ですが私は「いい加減にしたらどうだい」 スパンと木目が擦れる音がして、私の前には影が落ちた。 「アメリカさん…」 振り帰らなくても、私の影に被った大きな影ひとつ。貴方しか居ない。 「日本、君と話しがしたい」 その声は、いつもと変わらない陽気な貴方。 「私は話などしたくありません」 「日本…」 ああ呼ばないで。 「帰って下さい」 ああ眠りたい。 眠って朝まで独りで居たい。夢の中なら貴方は居ない。ああお願いです。眠らせて下さい。 「それは出来ない相談だな」 桜がひとひらひらひらひらり。 「俺はヒーローだからな」 背後から畳が軋む音がすれば 肌に感じる温もり。 ああ、いつ以来。 「俺は日本と話しがしたい」 「私は話す事などありません」 そんなの、言い訳にさえならない 話なら、背中がしてる。 君の小さな肩を 思いきり抱き締めた。 |