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「滝ちゃーん」


自室の障子戸を荒々しく開けると、そこには同室の級友が。


「なっ…喜八ろ…っ」



溢れ出す涙を拭っていた。




「あ…っ、開けるなら一言声を掛けてからにしろ…」


「呼んだじゃない」


そう返して、後ろ手に先程開いた障子戸を閉めた。滝ちゃんはまだ拭いきれていない涙を私に見せまいと、向こうを向いてしまった。



「ばっ、返事を待つのが礼儀だろう…!!」


「此処は自分の部屋だもの」


脚は迷う事なく滝ちゃんの元に進んでいて。大して広くもない部屋の端から端への移動は、あっという間に終わってしまった。

滝ちゃんの後ろにゆっくりと腰を降ろし、胡座をかく。この位置からでは、滝ちゃんの顔は見えない。



「どうしたの」



私が滝ちゃんの立場だったら、絶対に聞いて欲しくない言葉だった。



「何でも…」



「七松先輩が探してたよ」



自分の馬鹿。

滝ちゃんの背中が、一瞬ぐらついたのが判った。


堪えていた涙が、また溢れそうなのも。



「どうしたの。らしくないよ」


「……っ…」



ああ、泣き出してしまった。

泣かせてしまった。



「滝ちゃん」



滝ちゃんの髪を透く。


そのまま、





抱き寄せた。



「−−−−−−−っ」



滝ちゃんの表情が歪んでいくのが判ったけれど、気にしなかった。


「滝ちゃん」


「っ…先輩は…」


口を開いた滝ちゃんは、両手で顔を隠した。


「先輩は…悪くない…っ」


「うん」


「…私が…全部私が悪いんだ…」


「うん」


「私がっ…ちゃんとして…ないから…っ」




滝ちゃん。


随分と、自虐的になったものだね。自画自賛のアイドルは、何処へ行ってしまったの。



「私のせいで…」


「滝ちゃん」



ああ、もう。





そんな可愛くないこと言わないの




「七松先輩、怒ってなかったよ」


「…っ」



行っておいでよ。


もう、


私の知っている滝ちゃんじゃない。




 

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