「へーすけくーん、何読んでるの?」 「豆腐百科事典」 「そ…そっかあ〜…」 兵助くん。君は委員会の話以外は、豆腐豆腐豆腐豆腐豆腐豆腐豆腐豆腐って!僕は 「あー…」 「どうしたタカ丸」 食堂の机で突っ伏していると、前の席に来た人が声を掛けてきた。 「兵助く…じゃなくて鉢屋先輩」 「あれ、ばれちゃいましたか」 兵助くんの変装をした鉢屋三郎先輩だった。兵助くんの白い肌も、長い睫毛も、濃い眉毛もしっかりと特徴を捉えていて、一目では見間違えてしまいそうな程良く出来た変装だけれど。 「それ、かつらですから」 髪で判る。色や形はそっくりだが、艶とか細かい部分、普通では気にも留めない部分がお家柄判ってしまう。 「流石ですねー、タカ丸さん」 「そんな事ないですよー。鉢屋先輩の変装は中々難問ですよ」 ありがとうございます。と言った後鉢屋先輩は変装を解き、座りかけていた椅子に腰を降ろした。 「で、溜め息なんか吐いてどうしたんですか?」 何の接点もない僕の話を彼は聞いてくれるらしい。本人は「雷蔵が委員会行ってる間の暇潰しです」と言うが、それでも嬉しいものだ。僕は、それがねと兵助くんの事を話し始めた。 「あーね…。まああれは、もはや病気ですから」 「びょ、病気!?」 深刻な病なのだろうか、とあたふたする僕を、例えですと鉢屋先輩が抑える。 「タカ丸さんが、気に病む事ではないですよ」 「そ…そう、ですか」 でも、寂しいものだ。 こんなに優しくてくれる彼にさえ、兵助くんと同じ学年というだけで嫉妬してしまう程、僕は兵助くん、君に構って欲しい。 「それに、」 鉢屋先輩は最後に一言僕に残し、教室へ戻って行った。 気付けばもう昼休みは終わる時刻だった。 「タカ丸ー」 今日の授業も一段落。色々な教室に混ざって授業を受けるのは、学ぶ事が多くてこんがらがりそうだけど、その分色々な人と関われてとても楽しい。 自室へ戻る途中の廊下で、声を掛けられた。 「土井先生」 この学園で僕を呼び捨てにするのは、先生方か兵助くんしか居ない。少し期待してしまったけれど、僕はいつもの笑顔で振り返った。 「何ですかあ?」 「火薬委員全員召集だ。これから点検をする。疲れているところ悪いが、倉庫前に行ってくれ」 「はいっ!」 疲れてなんか、いられない。委員会?兵助君が居るじゃないか! 僕は速足で部屋に戻り、教科書等を置いた後、顔がにやけるのも構わずに外へと駆け降りた。 僕の話を聞いてください 「お待たせ〜」 「よっし、じゃあさっさと片付けるぞー!」 こっちを向くのは、それからでいいよ。 |