目を閉じても見えるものがあるんだ。 「おやすみ三郎」 実際に見えるのは、張り付いた瞼と、それが作る闇なのだけれど。 「おやすみ雷蔵」 例えば、灯りを消した部屋の闇に目が慣れるような。 はっきりとしたものではないけれど、確かに映るものがそこにはあって。 「三郎?…眠れないの?」 「え?…あ、いやそんな事ない。少し考え事をしてただけだよ」 「そっか」 ほら、もう慣れてきた。 「何笑ってんだよー」 「笑ってなんかないよっ」 「嘘だー、雷蔵 にやけてるもの」 「真っ暗なのに判るのー?」 「雷蔵の事はお見通しさ」 「何それー、三郎恥ずかしー」 目を閉じても見えるものがあるんだ 「あ、明日早いよね」 「そうだっけ?」 「そーだよっ。三郎、おやすみ」 君の、 「おやすみ、雷蔵」 笑顔とか。 |