BL
□好きの裏側
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学校帰りに、喧嘩をしながら歩いているブンちゃんと赤也を見た。
それは喧嘩と言うよりも、赤也が一方的に絡んでブンちゃんが逃げてるみたいだったけど。
「いいじゃないっスかセンパ〜イ」
「うるせぇどっか行け」
「そんなつれないとこも可愛いっスよ」
「死ね」
端から聞いてると本気で嫌ってるような口調だけど。
当の本人はお構いなしにブンちゃんに抱き付いたりしてて。
「俺はお前が嫌いだ!」
そう言って赤也を引き剥がしたブンちゃんの顔は、何故だか赤く。
その不思議な光景が理解出来なくて。
俺は今、ヒヨの家に居る。
「俺にはそれで俺の家に来るあなたが理解出来ませんが」
ぼやきながら、お茶とお菓子を出してくれるヒヨ。
何だかんだ言って優しい子だってことくらい分かってるんだよね、俺。
「だってさ、不思議じゃない?ブンちゃん赤也のこと嫌いって言ったのに」
なのに何で嬉しそうに見えたんだろう。
うーん、と首を傾げていたら。
不意にヒヨが口を開いた。
「好き‥だからじゃないですか?」
──スキ?
「それは恋愛感情としての好きってこと?」
「はい」
「でもブンちゃんは嫌いって…」
「好きの反対が必ずしも嫌いとは限りませんよ」
パリンと煎餅をかじる軽快な音がして。
俺の鼻に届く、醤油の良い香り。
ヒヨは年下なのに俺より落ち着いていて、そのくせ言うことが難しい。
好きの反対は嫌いじゃない?
じゃあ、好きの反対は?
「無関心」
単語で答えるヒヨの目は淡々としていて。
この会話自体が無関心なんじゃないかと心配になる。
まぁ、これがいつものヒヨなんだけどね。
「そっか。無関心、か」
確かにそれは嫌いとは違う。
嫌いはまだ暖かいけど、無関心は冷たくて痛い感じがする。
そう言いながらベッドに仰向けに寝転べば。
隣の方から鼻で笑われる。
「ちょっとー。先輩を鼻で笑うなよ」
「すみません。相変わらず面白いなと思ったもので」
また少し笑って、煎餅をひとかじり。
その顔がなんとも楽しそうで。
それを横目で見ながら、いつか絶対嫌いって言ってやろうと頬を膨らませた。
†end