BL

好きの裏側
1ページ/1ページ




学校帰りに、喧嘩をしながら歩いているブンちゃんと赤也を見た。


それは喧嘩と言うよりも、赤也が一方的に絡んでブンちゃんが逃げてるみたいだったけど。



「いいじゃないっスかセンパ〜イ」

「うるせぇどっか行け」

「そんなつれないとこも可愛いっスよ」

「死ね」



端から聞いてると本気で嫌ってるような口調だけど。

当の本人はお構いなしにブンちゃんに抱き付いたりしてて。


「俺はお前が嫌いだ!」


そう言って赤也を引き剥がしたブンちゃんの顔は、何故だか赤く。


その不思議な光景が理解出来なくて。

俺は今、ヒヨの家に居る。




「俺にはそれで俺の家に来るあなたが理解出来ませんが」



ぼやきながら、お茶とお菓子を出してくれるヒヨ。


何だかんだ言って優しい子だってことくらい分かってるんだよね、俺。



「だってさ、不思議じゃない?ブンちゃん赤也のこと嫌いって言ったのに」


なのに何で嬉しそうに見えたんだろう。



うーん、と首を傾げていたら。

不意にヒヨが口を開いた。




「好き‥だからじゃないですか?」




──スキ?


「それは恋愛感情としての好きってこと?」

「はい」

「でもブンちゃんは嫌いって…」


「好きの反対が必ずしも嫌いとは限りませんよ」



パリンと煎餅をかじる軽快な音がして。

俺の鼻に届く、醤油の良い香り。



ヒヨは年下なのに俺より落ち着いていて、そのくせ言うことが難しい。



好きの反対は嫌いじゃない?

じゃあ、好きの反対は?



「無関心」



単語で答えるヒヨの目は淡々としていて。

この会話自体が無関心なんじゃないかと心配になる。


まぁ、これがいつものヒヨなんだけどね。




「そっか。無関心、か」



確かにそれは嫌いとは違う。

嫌いはまだ暖かいけど、無関心は冷たくて痛い感じがする。


そう言いながらベッドに仰向けに寝転べば。

隣の方から鼻で笑われる。



「ちょっとー。先輩を鼻で笑うなよ」

「すみません。相変わらず面白いなと思ったもので」



また少し笑って、煎餅をひとかじり。



その顔がなんとも楽しそうで。

それを横目で見ながら、いつか絶対嫌いって言ってやろうと頬を膨らませた。



†end


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ