BL
□愛の糸は螺旋して
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可愛い可愛い俺の鳥。
その美しい羽を
千切って飛ばしたら。
キミは何処まで
逃げるのだろう?
「ジロー」
微風がレースのカーテンを持ち上げて、金の髪を優しく揺らす。
白いシーツに輝いて。
本当に綺麗。
「ジロー?」
欲しい筈の返事はなくて。
あるのは苦しそうな呼吸だけ。
それもその筈。
ジローは今、首を絞められてるから話せない。
「なぁ、苦しい?」
上から覗き込んで聞いてやれば。
ジローは眉を顰めて哀しげに俺を見た。
──パシッ!
「…っ」
乾いた音が部屋に響く。
「何その表情」
その顔もいいけど。
俺はお前の泣き顔が見たいんだ。
「──ッゲホ‥ゲホ…!」
手がはずれた反動で、空気を一気に吸い込んだジローが俺の下で激しく噎せる。
咳で死ぬんじゃないかと思うくらい苦しそうで。
ジローの目から。
涙が零れた。
あぁ、やっぱりだ。
笑った顔も怒った顔も。
どれもみんな好きだけど。
泣いた顔が一番綺麗。
だってそうだろう?
お前は俺の可愛い小鳥。
鳥は鳴かなきゃ鳥じゃない。
「可愛い」
ニコリと笑って、柔らかな髪を撫でる。
苦しげに丸めた背中が。
少しだけ緩んだ。
「なぁ、苦しかった?」
ベッドに腰掛けて優しく聞けば。
ジローは身体を横にした儘、ふるふると首を振った。
「じゃあ、痛かった?」
叩いた頬に触れながら聞けば、ジローは躊躇いがちに頷いた。
「そう。ごめんな」
笑って、頬にキスを落とす。
本当はもっと泣かせたかったけど、喉が潰れては台無しだから。
可愛い可愛い俺の鳥。
綺麗な声で鳴けたなら。
もっと可愛く泣かせてあげる。
†end