宝もの

□拙いキスですがこれでも必死なのです
1ページ/1ページ

木の葉の鎮守の夏祭り
今日は恋人達の特別な

日…


神社の参道に入る
青葉の桜の木の下
を…くぐる時……
下駄の鼻緒が切れ
たなら…将来……
何があってもその
二人に幸せが訪れ
るというそんな…


そんな迷信…


だが俺はそんな迷信…
信じねえ…神様なんか

くそくらえ…だ…!











拙いキスですが
これでも必死なのです
思春期サスサク












祭りばやしが
聞こえてくる


昔…母さんに
連れてきて…

もらった…

父さんは任務で
来れなくて……
……その代わり

兄……





「…サスケくん…!」



甲高い声に驚いた
俺は思わず肩を…
びくつかせると…
そのまま…後ろを
……振り返る……



「…お前か…」

「珍しいね…!あんなにナルトが誘っても来なかったのに…」

「お前…は…ナルト達とは一緒じゃねえのか…」

「…うん…なんとなく…ね…たまにはひとりで来るのも良いかなあ…なんて…」

「…………」



こいつの魂胆は
お見通しだ……
どうせ……俺が
来たら声かけよ
うとか待ってた
んだろ…その手
には…ぜってえ
のらねえからな


「ねえ…サスケくん…」

「…なんだ…」

「みて…!浴衣…母さんに着付けてもらったの」


サクラと漸く
向き合うと…
白地に紺柄の
浴衣を着て…
いて…それは


昔……母さんが
…着ていた浴衣
によく似ていた


「…サスケくん…?」

「……お前にしちゃあ…少し地味だな…」

「…そう…?でもこれ…母さんのおさがりだから…」

「………」



嬉しそうに白い歯を
見せて笑うと…くる
…くるとまわって…
さんじゃくの帯を…

揺らした…


その色は赤で…
薄紅の髪につけ
た髪結いの紐と
お揃いで………


俺がこいつの髪を
眺めていると気づ
いたように赤い紐
に手をやった……


「幼い頃にしてた赤いリボンつけてきちゃった…これ…子供っぽいかな…」

「……別に……」

「…………」

「…子供っぽくは…ない…」


こいつに付き合う
つもりなどなかっ
たのに…まあいい


「…お前…ナルトのとこに行けよ…じゃあな…」


そのまま立ち去る
はずだった………


「待って…」


やめろ…俺に
俺に構うな…

こいつの手を振りほどく
為に強く腕を引っ張ると


「…ナルトのとこには行かないの…サスケくんと…青葉の桜の木の下を…歩きたい…」


こいつ程…懲りないやつは
みた事が…ない…なんども
なんども…振り切っても…
しぶとく俺を誘ってきては


「…迷惑だ…」

「…わかってる…」

「お前…ばかか…」

「バカでもいい…」


開き直り…か!?


「ばかは馬鹿同士…ナルトとつるんでろ…俺に構うな…」

「…嫌…!!」


強く叫ぶと…こいつは
俺の腕を引っ張った…


「なにしやがる…」

「…いいから…来て…!」


珍しく…俺に
楯突きやがる


サクラに引っ張られ
道をずんずん進むと
神社の参道に入る…
青葉の桜の木の下に

来た…



「…別に…あたしは良いの…」

「…ああ…!?」

「あたしは幸せじゃなくても良い…サスケくんに幸せになって欲しいから…!」

「………」

「そりゃ…二人で幸せになりたい気持ちがない…って言ったら嘘になるけど…でも…あたし…あたしは…」

「…綺麗事なら…やめろ…」

「………」

「そんな言葉は…聞き飽きた…」


冷たい言葉を吐き続ければ
いくらこいつでも…いつか
諦めてくれると思ってた…


「でも…願いは叶うんだよ…」

「…帰る…」

「サスケくんは…復讐の為だけに生きている訳じゃない…」

「…うるさい…お前に何がわかる…」

「…そんなのわからない…!でも…サスケくんには…誰よりも幸せになって欲しいのに…」



走る俺を追って
サクラは下駄で
駆けてくる……

どうせ…転ぶに
決まってる……


びっ…たーん…



「いっ…たあ…」



ベタな展開しやがって
お約束通り転ぶんじゃ
ねえ…!鼻緒なんて…

そう簡単に切れる
もんじゃ…ねえ…



ぶちっ…



切れやがった…



「…切れた…切れたよ…サスケくん…!」

「……お前…本当に馬鹿だな…」


片方の赤い鼻緒の
切れた下駄を持ち


「…そりゃ…サスケくんを助けられるなら…あたしは鬼にも馬鹿にもなるよ…」

「…馬鹿な…やつ…」

「………」


なんでこんな冷たい俺に
こんなに優しくするんだ


「木の葉の鎮守の神さまに祈るの…二人分の幸せを…サスケくんにあげてください…って…」













ざわざわと…青葉の
桜の木が葉を揺らす












くそ…今日の俺は
特別だから…な…


「下駄貸せ…」

「…う…うん…」


サクラの手を…
俺の肩に乗せて
こいつの身体を
支えると俺の…
髪にぽたりと滴
が…溢れ落ちた


「ほら…出来たぞ…」


切れた鼻緒を治して
やると…涙を溢しな
がら…俺をみる……


「な…なんで泣く…」

「だって…せっかく鼻緒が切れたのに…治しちゃったら…」

「別に…」

「………」

「神ってやつが本当にいるんなら…ちゃんと見てるだろ…」

「…サスケく…」



だから…泣くな…





気が付くと……
俺はこいつを…
抱きしめていた


「目…瞑れ…」

「え……」

「いいから…早く…」

「…ん……はい…」





こいつを…うざいと
思っていた…だけど
本当は…嬉しかった
とても…だから俺は





こいつに…キスした





意味なんか…ない
ただしたかった…
それだけ…だ……



「…サスケく…ん…」

「…下手で悪かったな…」

これでも必死だったんだ



「上手だよ…」

「嘘つけ…」

「たどたどしくても…それが逆に…嬉し…可愛…」

「お前…やっぱり馬鹿…」

「サスケくんの為なら馬鹿になれるの…!」



今度はサクラの方から抱きつ
いてくると俺は耳元で囁いた





「浴衣…似合ってるぞ…」

「…サスケく…」

「こんなの…今日だけだからな…」





そして再度俺達は
拙いキスを交わす





それは神様が見せて
くれた真夏の夜の夢





拙いキスですが
これでも必死なのです



(お題配布元)joy


2008・08・09 実桜


あとがき

本当はREI★様より
健全男子での夏祭り
リクだったのですが
シリーズ以外の思春
期サスサクになって
しまいました…ごめ
んなさい…でも…こ
んなテイストの思春
期サスサクも如何で
しょうか…!今回の
サスケはなるべく…
クールになるように
頑張りました…でも
最後はツンデレ甘甘
で…!こんなので宜
しければREI★様のみ
お持ち帰りどうぞ!
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ