大振り
□『スタート』
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授業が終わり部活に向かおうと立ち上がった俺の前に人影がふさがった。
「阿部、部活の後なんだけどちょっと残れないか?」
顔を上げると頭ひとつ分ほど大きい花井が立っていた。
「ああ、用事もないし残れるよ。
何?来週の練習試合のこと??」
「っ、…いや。
その、個人的なことでちょっと………」
珍しく言い淀む花井の顔は、汗が額からにじんでいて余裕の無さが伺えた。
「…あ〜、俺でいいなら」
花井は、まだまだガキ臭さの抜けない俺達の中では、自分のことは自分で決めれる大人びた所がある。
知り合って半年近くになるが、野球以外の相談なんてこれが初めてだ。
頼りにされてるのか、と嬉しい反面
花井を悩ませる原因がわからず俺でいいのか不安でもあった。
水谷も交えて三人で部活に向かう間、花井はさっきまでの様子が嘘のようにいつも通りに振る舞っていた。
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